錬金術師カノンと五聖麗 3
「でも……」
シィナは不安気な表情で魁斗を見つめている。
「本当に大丈夫だって……まぁあっちなら態々自分を隠す必要もないしな」
カノンの言葉に違和感を覚えたシィナは、その部分を聞いて来た。
「え?自分を抑えるってそれってどういう……」
「おっと、うっかり口を滑らせてしまった……今のなし」
当然シィナは納得する筈もなく深く聞いてきた。
「そう言われましても、納得出来ません。はぐらかさないで下さい」
「だ〜め。君は信用はしているけど、信頼はしていないから。おいそれと秘密を教えるわけにはいかないな」
カノンは学院では劣等性を演じているが、実際はかなりの博学で、魔術の素養が全くないのは本当だが、それを取っても大量のお釣りが来る能力があった。それが錬金術であった。
錬金術は、扱いが非常に難しい故に使い手が極端に少なく、そしてそれをちゃんと使いこなしているのはほんの一握りしかいない。
そしてカノンはその扱い辛い錬金術を惜しまない努力と長年の研究成果のお陰で錬金術の力量は常にトップレベルなのである。
これを学院でそれを知っている者一人もいない。
カノンはそれで騒がれるのが嫌いなのである。
カノンの言葉にシィナは涙目になっている。
その所為で周りの視線が更にきつくなったが……
流石のカノンも泣き顔には困ったのか少し慌てた。
「あぁ、わりぃ……というか、俺等話す事はしても、其処まで仲良いと言うわけではないし、それに此処は衆人環視が多過ぎる。……そうだな、どうしても知りたいなら、授業が終わり次第、第二司書室に来てくれれ。」
「本当ですか!?」
「ああ、周りに話さないという前提でだが」
「分かりました。秘密は絶対に守ります」
「よし、いいだろう。約束は絶対に守れよ」
授業が終わり、カノンは第二司書室向かっていた。
扉を開けると、シィナが既に来ていた。
「おお、早いな。待ったか?」
「いえ、私も今来たばかりです」
「ん、そうか、それじゃ声とか漏れないようにするからちと待ってて」
するとカノンは、扉に手を添えた瞬間、バチバチとプラズマ音が立つと、ドアに閂の様な物が現れ、扉にくっ付いた形になっている。これで扉は完全に閉ざされ、司書室の中は二人だけになった。
「さて、質問に答えよう。何から聞きたい?」
カノンはシィナに向き直ると、妙な笑顔でシィナに話し掛けた。
「あの、今のは?」
「あれか?あれこそが俺の能力錬金術だよ。因みに、魔術が使えないのは本当だ。流石に追試でカオスゼクスへ行けは予想してなかったけどな」
カノンの告白にシィナはかなり驚いた表情を見せた。
「そんな、錬金術だなんて……でしたら、どうして本当の事言わないんですか?それなら……」
「まぁな、だが俺は騒がれるのが嫌いなんだよ。俺の進路に宮廷魔術師とかになる予定はない。錬金術を使えるのが明るみに出たら、否が応でも宮廷に呼ばれるだろうよ。だから俺は劣等性を演じているのさ」