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妊腹の魔女
官能リレー小説 - ファンタジー系

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妊腹の魔女 13

「え、ええ、今日は」
慌ててイリアは答える。
いけない。しっかりしなくては。
表情を繕って、イリアはまず二人に笑顔を向けた。
「お食事中だったのにごめんなさいね。フレジェにまだ説明していないことがあったの。私はこの後出かけなくてはならないから、悪いけれどシンシア、先に食事を済ませて、もしこちらの話が終わらなければ彼女の分を持ってきてくれないかしら」
全く、自分でも論理が破綻していると思ったけれど、シンシアは笑顔で従ってくれた。
一瞬フレジェの存在を忘れ、思わずため息が漏れる。しまった、とそちらを見ると、フレジェはじっとこちらを見て、単当直入、と呟いた。
…見抜かれている。
「…そうさせてもらうわ。フレジェ、あれは、何?」
「…………」
彼女はふい、と目を反らし、暫く沈黙した後、「仰っているのは」と切り出した。
「貞操帯は私の魔力を消化しています」
目を反らしたままで、フレジェは一言呟いた。
意外なことに、レーミアはこのことを知っているという。
しかし、誰の思惑が働いた結果なのか、という質問には、口をつぐんでしまった。
「私にできるのは」
フレジェは何か言いかけて、やめた。シンシアが戻ってきてしまったのだ。
イリアは内心でぎりぎり歯噛みをしながら、シンシアを迎えた。
…どうしよう。
シンシアはフレジェの朝食だけを盆にのせている。置いたら帰るだろうか?否、フレジェを置いては行かないだろう。どこかで待って、部屋まで送ってやるはずだ。
「お師母さま」
沈黙を会話の切目と受け取ったのか、遠巻きにしていたシンシアがやってくる。
…手詰まりね。
イリアが諦めかけたその時、フレジェがちいさなカードを差し出した。
「口に出してはいけないと、父が」
そう言いそえて。
とっさにそれを隠し、イリアは席を立った。シンシアに丁寧に礼を言い、食堂を出る。
…収穫は、ちいさなカードと「父」。
調べてみる必要がありそうだった。

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