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比翼の鳥は運命の空へ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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比翼の鳥は運命の空へ 9

 突然のことに驚いたアレスと少女が目を丸くしてこちらを見た。
 ベッドに座る少女の口元にはアレスが食べさせようとして失敗したシチューが付着している。だが既に勘違いしているリタの目には、それが違ったものに見えた。彼女自身に経験が無く、知識として知っていても実物を見た事が無かったのも厄介だった。
「な、おい、リタ! お前なにやって……!」
 事情を訊こうとしたアレスだったが、最後までセリフを言い切る事はできなかった。言い切る前にリタが彼に歩み寄り、右足を撥ね上げて全力で股間を蹴り飛ばしていた。
 
 
「なんだ、そういう事だったのね。なにかおかしいと思ったけど、。アハハ」
 絶対に嘘だ。朗らかに笑うリタを見て、モニカはそう思った。
 股間を蹴り上げられて悶絶するアレスが叩き出された後、モニカはとりあえずリタの誤解を解いた。リタがなにを勘違いしてアレスをシバき上げたのかは定かではないが、なんとなく自分の名誉に関わる気がしたからだった。
 リタはどうやら思い込みの激しい性格らしくなかなか話は進まなかったが、モニカはなんとか言い聞かせる事ができた。
 そうして冷静さを取り戻したリタの介助を受けて、モニカは食事を済ませた。半分残してしまったが、身体が暖まって少し元気が出たような気がする。
「ゆっくり休んでね。無理しちゃ駄目だよ」
 食事に検温、その他諸々の世話を済ませたリタはそう言ってモニカを寝かせると、半分残ったシチューを持って出ていった。
 狭い小部屋に一人になる。
 モニカは食事中にリタから引き出した情報を頭の中で整理する。
 どうやら自分は河に流された事で徒歩で十日分くらいの距離を戻ってしまったらしい。
 先を急ぐ身としては痛いロスである。だがあと半歩で敵に捕まりそうだったあの状況を切り抜けた事を思えば、この程度で済んだのは幸運と言えるかもしれない。
(そうよね。助かった事だけでも喜ぶべきだわ)
 不意にアレスの顔が頭に浮かぶ。助けてくれた命の恩人。
(意外に、しっかりした腕だったわね)
 身体を起こしてくれた時に触れた彼の腕は見た目以上に逞しかった。
 触れた部分が熱い。そしてそれを意識すると、全身が熱くなってきた。胸の鼓動も速く、強くなる。
(ってなにドキドキしてるのよ!?)
 急に気恥ずかしくなったモニカは、シーツを引き寄せて頭からかぶった。
 ベッドに染み付いた他人の匂いが鼻をくすぐる。そしてそれがアレスの匂いだと気付いて余計に恥ずかしくなった。
 身体がろくに動かないせいでベッドから出る事もできず、モニカは眠りに落ちるまで身悶えるしかなかった。

 夜。アレスはなかなか眠れなかった。
 原因はわかっている。隣りの部屋でモニカが寝ているせいだ。
 拾ってからすぐはこんな風にはならなかった。だが今日の昼に彼女が目を覚まして言葉を交わしたためか妙に意識してしまう。

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