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比翼の鳥は運命の空へ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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比翼の鳥は運命の空へ 8

有無を言わせず差し出された木の匙を右手で受け取る。しかしそれはすぐにシーツの上に落ちた。
「え?」
 手に力が入らない。
 モニカが戸惑いの声を上げると同時に、アレスはやっぱりなと小さく呟いた。
「食わせてやろうか?」
「なっ……」
 予想外の反撃に顔を真っ赤にして絶句するモニカに、アレスは意地悪く笑ってみせた。
「匙も満足に持てないんじゃ自分で食うのは無理だろ? だから俺が食わせてやるぞ」
「よ、余計なお世話よ!」
 と言った次の瞬間、絶妙なタイミングでモニカの腹が鳴った。
 
 
 隣家の住人であり、アレスの幼馴染みでもあるリタが訪ねて来たのはそんな時だった。
「アレスー?」
 呼び掛けても返事が無かったが、リタは構わず中に入った。
 毎日のようにアレスを訪ねてはアレスの世話を焼いている彼女には、この程度の事に抵抗は無い。勝手知ったる他人の家というやつだ。
 そうして中に入った彼女は、寝室として使われている小部屋の方が騒がしいのに気付いた。
 アレスが拾い、父が診た少女が目を覚ましたのだろうと当たりを付ける。彼女の父はイオタ村にただ一人の医者だった。
 小部屋へと続く扉に歩み寄る。すると薄い粗末な壁を通して内部での会話が聞こえて来た。
「身体の方がよっぽど正直だな」
 アレスの不穏なセリフに、ドアノブに伸ばしかけていた手がピタリと止まる。
「いいから口開けろよ。恥ずかしいのはわかるけど無理は良くないんじゃねえの? 現に身体は欲しがってるんだから」
「ちょっ、そんな強引に……!」
(な、なに? 一体なにやってるの!?)
 リタは心中で困惑の声を上げたが、脳内では既にいかがわしい妄想が展開されていた。
 下半身を露出したアレスが、まともに動けない怪我人の少女の口を無理矢理こじ開けてモノを突っ込もうとしている。リタはそう思った。
 実はこのリタという少女、純朴そうで野暮ったい外見とは裏腹に、時たま村に来る行商人から買ったいかがわしい小説を読むことを趣味としている。
 その趣味で培った偏った性知識が、無茶苦茶な想像を掻き立てた。
「おわっ! バカ! 暴れるんじゃ……あ!」
「熱……っ! ちょっとなにすんのよ! 顔にかかったじゃないっ!!」
(か、顔にかかったって! ナニが!?)
 決定的な展開があったらしいセリフに、リタは頭をがつんと殴られたかのような衝撃を受ける。だが既に混乱の極地にあった思考は、そのショックで逆に冷静さを取り戻した。そして自分のこめかみがピクピク引きつっている事に漸く気付く。怒りの矛先はもちろんアレスだ。
 初対面の女の子、しかも満足に動けない怪我人に襲いかかった事が酷く気に食わない。
 無意識の内に噛み締めていた奥歯がギリリと耳障りな音を立てた。
 我慢ならない。
 リタは右足をおもむろに持ち上げると、次の瞬間目の前の扉に全力で蹴りを叩き込んだ。

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