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比翼の鳥は運命の空へ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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比翼の鳥は運命の空へ 7

「少しなら……」
「おう、わかった。んじゃ持って来る」
 そう言って少年は部屋を出ようとしたが、扉の前でなにかを思い出したように振り返った。
「自己紹介忘れてたな。俺はアレス、アレス・ベガルタ。そっちは?」
「モニカよ」
「モニカ、か。それじゃモニカ、おとなしく待っててくれよ」
「言われなくても動けないわよ」
 モニカの素直じゃない返事に苦笑しながら、アレスは部屋を出て行った。
 再び一人になったモニカは苛立たしげにため息を吐いた。
 仮にも恩人に向かって自分はなんて態度を取っているのだろう。
 同じ年頃の男の子と話をするのが久々だったとはいえ、もう少し素直に受け答えしても良かった筈だ。
(自分が素直ないい子じゃない事はわかってたけど、あんなに捻くれてたつもりもなかったのに……)
そんな事を考えているうちにアレスが戻ってきた。その手にはシチューを持った木の器と木の匙を持っていた。
「起き上がれるか?」
訊かれたモニカは腹筋に力を入れて起き上がろうとしたが、身体に力が入らず起き上がる事ができない。肘を立ててめみたがそれでもだめだった。
 さっき動けないと言ったのは憎まれ口だったが、あながち外れてもいなかったらしい。
「あー、俺が悪かった。無理させちまったな」
 アレスはシチューをサイドテーブルに置くと、シーツを捲ってモニカの背中とベッドの間に片腕を差し入れた。
「……っ!」
 モニカはいきなりの事に息を飲み、身体を強張らせた。しかしアレスはそれには気付かず、彼女の上半身を起こして座らせた。
「辛くないか?」
 まだ動揺していたモニカは声には出さずに首を縦に振っただけで答えた。
 そこではたと気付く。
「やっぱどっか痛いのか?」

突然険しい表情で黙り込んでしまったモニカを怪訝に思いながら訊くと、彼女は顔を上げ、鋭い目でアレスをにらみ上げた。
「なんだよ?」
「どうして服が変わってるの?」
 モニカは自分の着ている服に目をやった。彼女が着ているのは清潔そうな白いシャツとゆったりとしたベージュのズボンだ。河に飛び込む前に着ていた蒼色のワンピースではなかった。
「そりゃあ、すぶ濡れだったから着替えさせたに決まってるだろ」
「……貴方が?」
「ぶっ!」
 モニカが何を疑っているのかに気付いたのか、アレスは激しく動揺した様子を見せた。
「ば、バカっ! そんなわけあるか! 着替えさせたのは別のやつに決まってるだろ!」
「本当に?」
「本当だ。聖霊王に誓ってな!」
「……まあ、そう言う事にしておいてあげるわ」
 完全に疑いが晴れた訳では無いが、アレスが誓った聖霊王に免じて、ひとまず追及をやめた。
 しかしまだ疑われていると解ったのか、アレスは顔をしかめて低く唸った。
 そんな彼の目がふとサイドテーブルのシチューに留まる。
「ちょっと手出してみろ」
「いきなりなによ、偉そうに」
「いいから、ほら」

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