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比翼の鳥は運命の空へ
官能リレー小説 - ファンタジー系

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比翼の鳥は運命の空へ 12

 声を漏らさぬようにと噛んでいたシーツを離す。
 ショーツの中から引き抜いた手は愛液に濡れ、濃い雌の匂いがした。雨戸から差し込む月明り、その下てぬらぬらと光る手はとても淫らだった。
 アレスが外でリタと遭遇してたその頃、寝室で寝ていたモニカは堪え難い身体のほてりで目を覚ました。
 欲情した身体は我慢が利かず、自分で慰めるまで収まらなかった。
(やだ……私こんなに)
 自分の行いを恥じると同時に、戸惑いを覚える。
 モニカも一人の女だ、性欲を持て余すことだってある。自慰に及んだことだって初めてじゃない。
 だが初めて訪れた他人の家で、それも同年代の少年のベッドの中でしてしまった事には正直驚いた。自分はこんなにも淫らだったのかとショックすら受けた。
(なんで……こんなにも気になるのよ……)
 行為の最中に脳裏にちらついた顔、それは紛れもなくアレスの顔であった。
 アレスを意識している、その事実は認めざるを得ない。
(どうして……?)
 だがその理由がモニカにはわからなかった。それを理解するには彼女の精神は未熟だった。
(全部……あいつがいけないんだわ)
 その結論は間違ってはいないが、真実には遠い。モニカがその事に気付くのはまだ先の事だった。


 翌日、モニカのもとにリタの父、マーガス医師が訪ねて来た。
「ふぅむ、だいぶ良いようだね。昨日目覚めたばかりとは思えんよ」
 モニカの診察を終えた医師はそう言って微笑んだ。
 実際モニカは昨日よりもずっと体調がよかった。立って歩く事はできないが、一人で起き上がる事はできるし、食事の介助もいらなかった。
「しかしまだ無理はしないように。リタ、身体を拭いてげなさい」
「うん」
「よかったな」
「え、ええ……」
 自分のことのように喜ぶアレスにモニカはぎこちなく応えた。若干伏し目がちなのは、彼の顔を見る度に昨夜の行為を思い浮かべてしまうせいだ。
「ところで、それは何?」
 モニカが指差したのはアレスの左の二の腕に巻かれている包帯だ。昨日初めて見た時には怪我かと思ったが、よくよく観察してみれば不自由しているようには見えなかった。
「これか? これはまあ口実だな。先生呼ぶにしても理由がいるだろ?」
「ああ、そういうことね」
 モニカは他の村人には内緒で匿われている。
 なのでマーガス医師がアレスの家を訪ねて診察を行うために、アレスが怪我をしたという偽りの理由が必要だったという訳だ。
「おかげで俺が付きっきりで看病しても不審がられなかったよ」
「……でもその間貴方は仕事ができなかったんでしょう? それってなんだか申し訳ないわ」
「……へぇ」
「なによ、きょとんとしちゃって」
「いや……意外と細かい事気にするんだな。もっとふてぶてしい奴かと思ってたぜ」
「な……!」
 モニカは目を丸くして驚いた。確かに昨日は素直に振る舞えなかったが、まさかそんな印象を持たれてるとは。

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