PiPi's World 投稿小説

大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 94
 96
の最後へ

大陸魔戦記 96


「……」
その時になって、初めて目に力を宿したジルド。彼は真っ直ぐ、アグネスを見据える。

「……」
一方、言われた事の意味を理解しかね、半ば茫然とするアグネス。彼女は丸く見開いた目で、ジルドを凝視する。

――しかし、しばらくの後に言われた事の意味をようやく解した時。


「…では、姫様の時は何故、肌を重ね合わせ、あまつさえ深く繋がり合ったのですか…?」


ジルドの真剣な眼差しが、凍り付く。


「…好きでもない男と肌を重ねる事をよしとしないならば、何故重ねたのですか…?」


静かに、崩れ落ちる。


「…是非とも…お聞かせ願いたいものです」


――その顔は、笑みさえ浮かべていた。
しかし、その目だけは、微かな笑みさえない。むしろ、怒りを漂わせている雰囲気すらある。

ジルドの顔を、冷や汗が流れる。

――何か言わねば。
――何としても納得させなければ。
――さもなくば、二重三重の意味で危険だ。

どうやら百戦錬磨の剣豪には、アグネスの「笑わない」笑みが何を意味するか、直感的にわかるらしい。
彼は微かに顔を強ばらせ、必死で言葉を絞り出す。

「いや、最初は断ったんだが、いきなり抱きつかれた上に媚薬の作用や相手の事とか考えてしまって、更には『ジルドだからすがりたい』と言われてしまい……その、何だ、最終的に…」

――アグネスの中で、何かが切れた。

笑みを浮かべ、近くにある酒の入った瓶を手に取ると、再びジルドに忍び寄る。

「…煮え切らない男め」

ぐさりと、一言。なおも取り繕うとしていたジルドは、押し黙ってしまう。

「…普段は冷静なのに、女が絡むと真剣になったりしどろもどろになったり…」

瓶の蓋を器用に指で弾き飛ばしながら、アグネスは畳みかける。
――そして。


「…無性に腹が立つ。男ならば常にどっしりと構えていろ」


瓶の口をくわえ、軽く傾ける。中の液体が揺らめき、アグネスの口腔に流れ込んでいく。
一度喉を鳴らし、それを幾らか飲んでから、口を離す。そして瓶をテーブルに置くと、最後にジルドを見据え――


隙だらけの唇に、己の唇を重ね合わせた。

「っ!?」

ジルドの目が、驚愕に見開かれる。
しかしアグネスは構う事なく、ジルドの頬を両手で挟み込み、少し上を向かせる。すると、先程アグネスが口に含んだ酒が、微かに開かれた唇を通り、ジルドの口に流れ込んできた。彼はそれを、ただ飲み込むしかない。

「…ん…ちゅ……んぅ…ふ、んん…」

ジルドの口に酒が流し込まれた後も、アグネスは一心不乱にジルドの唇を貪り続ける。
積極的に舌を絡ませ。
わざとらしく音を立て。
ジルドを揺さぶるかのごとく。

「…ん……ちゅ…ふぅ」

たっぷりと味わった上で、ようやくアグネスは唇を解放した。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す