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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 91

 つまりは、意図的でもなんでもなく。
 純粋に私の事を、子供だと思っていると。

 なんの事はない、そういった策を巡らしている時点で――
「――やはり、意図的であろうが」

 そんなセリーヌの事など何処吹く風。

「は? なんの事でありましょう」
「…本当に意地が悪いな」

 そうに言ってのけたアグネスを見て、セリーヌはふさぎこんだ。
 この相手に、反撃という手段がありえるのか、と。
 だが、このまま引き下がりたくは、ない。

 待てよ。

 ふと、セリーヌは思った。
 アグネスの突然の癇癪とは一体何に起因しているのだろうか、と。
 直接のきっかけではない。もっと根のところにある理由。

 笑みをこぼさぬよう、拗ねた風を装って。
 言い当てて、みた。

「…その子供に、ジルドを取られたのだぞ、ん?」

 セリーヌの髪を弄んでいたアグネスの手が、僅かに、迷うように止まった。

 やはり、そうか。
「卿はまだなのか」
「な」
「そうか、当たりか」
「滅相もございません」
「ジルドは、優しいぞ」
「姫様!」

 これは、面白い。

「いつからそんな下世話な話をなされるように――」
「むきになっておる所がなんとやら、と言ったのは卿であったな」
「…これは姫様のご指摘が全くの見当違いであるがための反応でございますれば」
「どう、見当違いだと言うのだ?」

 は、と詰まるアグネス。

「我の言葉のどこがどのように見当違いか言うてみよ。アグネス」

「…」
「この場での沈黙は、事実と言っておるようなものだ
ぞ」

 俯いたアグネスの髪が、セリーヌの頬に触れる。
 そのこそばゆさを口実に振った顔を、姫は背後のアグネスに向けた。

「図星であろう」

 真意を覗き込むために、相手の目をしかと見る。

「…」

 されど、湯気に隠れて、見えない。
 ふと、セリーヌは思った。


 我はここまでして何を得たいのか、と。
 ここまで押し通した狂騒はなんだったのか。


「…アグネス」
「…は」
「我が兄上達の会話に混ぜてもらえぬと、駄々をこねたことが、あったな」

 セリーヌは、己の焦燥の原因を悟った。
 ただ、アグネスを失いたくなかったのだと。

「あの時、卿はこう言ってくれた。私は姫様に隠し事などいたしませぬ、と」
「――姫様」

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