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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 84

「…どうした?」
その問いかけにジルドは答えず、黙って背中の巨剣の柄に手をかける。それを見てとったアグネスが、慌ててジルドの前に飛び出した。
「ま、待て!街中で抜刀する気か!」

だがジルドは、剣を掴んだまま人垣をぐるりと見回す。当然、集まっていた人々は慌てて目を逸らし、何事もなかったかのように立ち去っていく。
そして人垣が完全に崩れた所で、ジルドは剣から手を離した。
「…馬車を通さねばならないかもしれないからな。彼らには悪いが、少し脅させてもらった」
飄々と言ってのけると、ジルドはセリーヌとアグネスを見やる。
「行こう。こういう所の宿は、早い内にとった方がいい」
「わかった。では、まかせたぞ」
セリーヌはジルドの隣にぴたりと寄り添って歩き出す。
「…あ、ああ…わかった…」
一方のアグネスは一瞬、納得がいかないような顔をしたもののすぐに顔を引き締め、二人の後に続くのであった。






――我を取れ

「…我、だと?お前は一体…」

――我は楔
――そして『欠けてしまったもの』

「欠けてしまった?何を言っているんだ、お前は」

――汝は『欠けてしまったもの』を探し出さねばならない

「何故だ!そんな事をする理由など」

――ある
――汝も『欠けてしまったもの』のひとつ
――『守る力』が欠けてしまったもの

「……守る力…だと?」

――そして我は『心』が欠けてしまったもの

「…心…?お前は、心を探しているのか?」

――我が我であるためになくてはならない欠片
――今や僅かなコトノハが残るのみ
――忘れては
――ならぬもの

「…それを、俺が探すのか?」

――コトノハはただ三つ
――亡国

「ま、待て!それを教えてどうし」

――姫

「話を聞け!俺はまだ承諾してなど」

――そして愛
――その身が、そして我が身が朽ちる前に

「おい!待て!俺は――」

――汝のみが頼りだ



――ジルド





「……ド……ジ…ド…!

…ジルド!聞いておるのか!」

我に返って辺りを見回せば、目の前には翡翠の瞳。
一拍置いてジルドは、自分がトルピアの宿の一室にいる事を思い出す。

「…済まない…どうやら白昼夢を見ていたようだ」

言いながら、自分を見つめるセリーヌの肩越しに、壁に立てかけた剣を見やる。
(…戒め…なのか?だが、こんな時に…)
「全く、謝ってばかりだなジルドは…事ある毎に謝らずとも」
と、そこまで言った所で、心此処にあらずといった様子のジルドを睨みつける。

「…どうしたのだ?ジルドらしくもない」

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