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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 83

当然、二人は怪訝そうに顔をしかめる。
「何だ?またリオーネの時のように、黒い噂があるわけではないのだろうな?」
姫の身を案じたアグネスが冷たい目を向けても、彼は首を振る。
「…詮索は後にしてくれ」
それだけ言って、降参する素振りを見せない。

「無理だ。私にはひめ…セリーヌを守る義務がある」

そしてアグネスの方も、一歩も引く様子を見せない。
「それに、私達二人はここをあまりよく知らない。ジルド殿だけが頼りなのだ。それなのに貴方がそうやって言うべき事を先延ばしにしていては、大事があった時にどうするというのだっ」
更には一気にまくし立て、ジルドの胸ぐらを掴む。それでもジルドは、煮え切らない態度をとるばかり。
「ジルド殿っ!」
とうとうアグネスは激昂し、喚いてしまう。
一方、完全に蚊帳の外に置かれてしまったセリーヌは、思わずため息をついてしまった。
「……全く…」

確かに、アグネスの意見にも一理ある。知らずに大事に至った時に後悔しても、手遅れなのだ。
しかし冷静に考えてみれば、ジルドがわざわざ危険を孕んだ場所を逃げ場に使うだろうか。

―――否。

リオーネからは他にも二つの街に行けたはず。なのに敢えて危ない橋は通るまい。
ならば、ジルドが言う『個人的に好きではない』理由―――おそらくは取るにたらないものであろう。

そう結論づけ、セリーヌは二人の方を見やる。
アグネスは依然として強固な姿勢を崩してはおらず、ジルドに詰め寄っている。自分のためを想ってくれるのは嬉しいが、街中で騒がれては流石に迷惑だ。

「…アグネス、よさぬか」

故に、彼女は忠信なる臣下の肩に手を置き、止めに入る。
「ジルドがわざわざ危険な場所を選ぶと思うか?」
「しかしっ」「文句は後にせよ」
食い下がろうとするアグネスを、セリーヌは遮るかのように一蹴する。
「ここは街中だぞ。それに、我らは見せ物などではない」
その言葉にアグネスははっとなり、慌てて辺りを見回す。
どうやらジルドとアグネスの問答が大きすぎ、人をよびこんでしまったらしい。周りには、好奇の目で彼らを見つめる人垣が形作られてしまっていた。それを知ったアグネスは慌ててジルドから手を離し、顔を真っ赤に染める。

「まずは宿。それからだ……ジルドも、それでいいな」

「ああ…済まない」

「謝らなくても良い。では、行こうか」

と、先へ行こうとするセリーヌを制する者がいた。ジルドである。

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