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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 82

当然であろう。ただでさえ理解しがたい話であるの。加えて、このような噛み合わないやり取りをされてしまっては、余程の理解力を持っていても理解するのは容易ではない。
ジルドは後ろに横たわるセリーヌに助けを求めるが。
「……アグネスが寝てしまっては話にならぬ。済まぬが、この話は明日にでも持ち越そう」
一人納得して、毛布を被ってしまう。

(…いかん。頭が混乱してきた)

取り残されたジルドは釈然としないものを感じながらも、ひとまず寝るしかなかった。残った毛布を取り、愛剣の傍らに腰を下ろす。
(…正直、万のオークを相手にするよりはるかに辛いぞ、相棒)

鞘に収められたそれを、苦虫でも噛み潰してしまったかのような顔で睨みつけると、ジルドは毛布を被り、目を閉じた。



翌朝。
ジルド達は朝日が上るのと時を同じくして、馬を走らせ始めた。
岩の目立つ平原を抜け、それから数刻かけて街道を南下。そして道中、賊に襲われる事もなく無事、目的地―――トルピアにたどり着いた。
トルピアは、リオーネと街道で結ばれた湾岸都市である。
今は亡き先代リューン王の融和政策に賛同する商業都市の一つで、リューンブルクとは不可侵同盟を結んでいる。とは言っても帝國に忠誠を誓っているわけではなく、自治都市群の最大拠点であるリオーネとも商業同盟を結び、良好な関係を保っている。
「媚び売りの名手」と揶揄される通り、極めてしたたかなのである。もっとも、それが成り立っているのは、トルピアが占領地としての価値に乏しいが故の事であり、決してトルピアが強固なわけではない。
そしてトルピアは、大陸一の観光都市でもある。
南に面したエレナ海は一年を通して心地よい水温を保ち、浜辺に人が絶える事はない。また、数々の遊郭や舞台を擁するために、昼夜を問わず人で賑わう。

ジルドが目的地をトルピアに定めた理由は、そこにあった。


昼の、最も人がごった返す時間帯。馬車を伴って街の入り口にさしかかっていた一行は、一度馬車を降りる。そして開口一番、セリーヌは感嘆の息を漏らす。

「……賑やかだな…」


「はい…王都でも、これほどは…」

アグネスも目を見張る。その後ろで、馬を停めたジルドが口を開いた。
「トルピアは大陸一の観光都市だからな。人も集まる。故に身を隠すにはうってつけだ」
が、そこまで言った所で、不意に眉に皺を寄せる。

「…だが、個人的にここは好きではない」

「…何故だ?」
ぽつりと呟かれた言葉を耳聡くききつけた二人は、首を傾げる。しかしジルドは、しまったとばかりに顔をしかめ、所在なさげに目を泳がせるばかり。
「…済まないが、先に宿を取りたい」
挙げ句の果てには、話題をすり替えてしまう。

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