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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 81

一方、事の成り行きを見守る事にしたジルドは、先程のやり取りに何か引っかかりのようなものを感じていた。

(……一度男と別れた…?)

確かにセリーヌは、アグネスにそう言っていた。アグネスの変容ぶりを見る限り、どうやらそれは真実であるらしい。

(…傍で仲睦まじくされるのは、独り身には堪えるようだからな…)

ジルドは独り身の辛さを感じた事はない。しかし『紳士たる騎士』とあだなされるだけあり、疎いというわけではない。故に、アグネスが殊更激しくなじるのも理解できた。

(自重、しなければな)

ジルドは内心ため息をつく。

「ジルド!」

が、唐突に呼ばれ、思わず身を強ばらせる。
気がつくと、セリーヌとアグネスの口論は終息していたらしく、アグネスは口を閉ざしたまま、こちらを上目遣いに見つめている。
「…ジルド」
二度呼びかけられ、今度は声のした方―――セリーヌを振りかえる。見ると、彼女は悪戯っぽい笑みでこちらを見つめている。

「…卿は、妾を持つ気はあるか?」

その目は、ホテル・リオナ・トリオンフォルテでのやりとりの中で「呼び捨てにせよ」と告げた時の目に、そっくりだった。
「…は?」
言われた言葉の意味が理解できず、ジルドは間の抜けた声を上げてしまう。その様子が不服だったのか、セリーヌは口を尖らせる。
「は?ではない。妾を持つ気はあるのか?」
「……話が見えないのですが」
やはり言われた言葉の意味が理解できなかったジルドは、素直に聞き返す事にした。
「…要は、我の他に所帯を持つ気は」「ちょっと待った」
不機嫌そうなセリーヌが言い切る前に、ジルドがそれを遮る。
「…俺が、セリーヌと?所帯を持つ?何故?」
「…ああ、卿はリューンブルクの王家の古い習わしを知らなんだか」
セリーヌは意外そうな顔をする。が、気を取り直し、口を開く。
「王家の皇女は、肌を寄せ合い、操を捧げた相手を永遠の伴侶とする習わしがあるのだ。故に、我と卿はもう夫婦(めおと)なのだ…」
うっとりと微笑むセリーヌ。しかしジルドは目を大きく見開いたまま、彼女を見つめるばかり。
「…まあ良い。それで、我が言いたい事はだな…」
呆けたままのジルドを置いて、セリーヌは再び口を開く。しかし、そこに来て。
「わっ、私はジルド殿の妾になるなどとは言ってません!」
その言葉は、半ば放心状態にあったジルドを無理やり引き戻した。
「…アグネス殿が、俺なんかの妾に?何故?」
途端に、アグネスの顔が再び真っ赤に染まる。
「とっ、とにかく!セリーヌ、それにジルド殿、この話は終わりです!お休みなさいませ!」
慌ててそれだけ言うと、手近な毛布をひっつかんで頭の上から被ってしまう。その様子にセリーヌは「初々しいのう…」と苦笑するが、ジルドは事の子細が全く理解できない。

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