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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 67

「お、お許しください!まさか、私共の知らぬ所でそのような事があろうとはいざ知らず…我が方の不手際、何を以て償うべきか」「構わん。どうやら別の所が一枚噛んでいたようだしな」
己が保身を考えての事なのか、一斉に頭を下げる委員達。それを内心鬱陶しく思いながら、ジルドは言葉を遮る。
「それに、端から咎める気もない。咎めようもないからな」
ジルドはあえて、ぶっきらぼうに言う。それにはある理由があったのだが―――
「そ、それでは私共の面子が立ちませぬ!せめて、せめて謝罪の形として何か!」
ジェイコブの悲痛な願いに、ジルドは内心ほくそ笑む。しかしそれを微塵も出さず、口を開き―――


「よい。真に罪を咎められるべき者もないのに、卿らを責めても仕方あるまい」


ジルドを遮るように、セリーヌが許しの言葉を告げた。その目は微かに赤みを帯びてはいるものの、威厳は失われてはいない。
「…もう、平気か?」
面食らいながらも、ジルドが問いかける。それに答えるかのように頷くと、セリーヌは彼から離れる。そしてジェイコブを見据え、毅然とした態度で相対する。
「事が事ゆえ、卿らが謝る理由はない。面(おもて)を上げよ」
その言葉に、委員達は慌てて顔を上げる。しかしその顔は、やはり困惑と不安を隠しきれていない。
「一連の事はサンチェスの暴走であり、卿らは何も知らなかった事はわかった。謝罪すべきはサンチェスであり、卿らにその義務はない」
「あ、ありがたき幸せに御座います!」
困惑と不安に、更に安堵を加えた複雑な面持ちで、委員達は何度も平伏する。
「それに我は、今は落城の姫君。いわれのない理由で卿らを裁く権利もない」
そこまで言ったところで、セリーヌは後ろに控えたジルドとアグネスを振り返る。二人は黙って頷き、アグネスが前に出た。
「我らはすぐにここを発つ。故に、あまり気をつかわなくてもよい」
すると、ジェイコブはさっと顔を上げる。
「で、では!せめて旅支度に必要と思われるものを用意させていただきます!なんかりとお申し付けくださいませ!」
早口にまくし立てるジェイコブの様子に、アグネスとセリーヌはジルドを見やる。

どうするべきか―――

二人とも計りかね、ジルドに助けを求めたようだ。その意図を察し、ジルドは黙って前に出る。そしてセリーヌに跪くジェイコブの前で膝をつくと。

「ならば、頑丈で大きな馬車と、それを引く馬を頂こう」

ジルドが最も欲し、いずれは手にしなければならないと思っていたものを、所望した。




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