PiPi's World 投稿小説

大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

の最初へ
 5
 7
の最後へ

大陸魔戦記 7

 男の言葉に宿るは、山よりも高き怒りと、海よりも深き恨み。
 されど、逆に兵士たちは己の使命を思い出し、奮い立った。もとより、この場にいるはリューン王軍選りすぐりの精鋭たち。
「我らを侮るかっ」
「ここを死守するのは、リューンの王旗、引いてはセリーヌ殿下の御為」 
「その我らに姫様のおわす所を聞くとは、片腹痛いわ!」
 青白き顔に決死の表情を浮かべ、兵たちは各々の武器を掲げて気勢をあげた。

「止めい」

 アグネスの、静かなれども内に秘めたる激しさを含んだその命令に、流石の兵士らの声も止む。
「そなた等では相手にならぬ。私が直々に相手をしよう」
 そう宣言すると、剣を掲げて男の前に進み出る。
「我が名は…否、貴君に名乗る名前などはない」
 敵意を露わにして睨むアグネスを、男は意外そうに見やる。
「この俺と、一人で渡り合うつもりか?」
「貴君に対して、数を頼んで攻めかけても無駄だという事は、先のオークとの戦いで十分に教えてもらった」
 男は虚を突かれたように黙り込み、しかし、すぐさま笑みを浮かべた。
「なるほど…悪くない判断だ」
 男の剣がもたらす攻撃は広範囲かつ強力でありその威力は脅威ではあったが、それだけに隙が大きい事もアグネスの冷静な観察眼は捉えていた。

 懐に入り込んでしまえば勝機がある。

 もっともそれは容易いことではない。
 男は歪なる形状をした巨剣を構え、アグネスをひたと見据えながら言い放つ。
「俺の攻撃を一人でかわせるのであれば、の話だがな」
 そう、懐に入り込むためには、男から放たれる攻撃を全てかわさなければならないのだ。
 そうして近づいて尚、対等に立つ事ができるかどうか。
 されど。
「私とて、伊達に将を務めているわけではない。そなたの剣技、受け止めて見せる」
 アグネスの脳裏に、主の姿が浮かぶ。
 あの方の為ならば、私はどんな事も厭わぬ。あの日を境に、そう誓ったのだから。
 アグネスは剣を握り締め、ともすればあふれ出してくる懐かしき思い出と別れを告げるべく、虚空を睨む。

 殿下の敵は、私の敵――

 剥き出しの敵意を向けたアグネスに対し、男もまた尋常ではない殺気を返す。
 視線が交差し、永遠にして一瞬の時が流れた後――
「っ!」「おおぅ!」

 両者の剣が、交差した。





SNSでこの小説を紹介

ファンタジー系の他のリレー小説

こちらから小説を探す