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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 41

まさか、怒りのあまり姫君もろとも自分らを斬ろうとしているのか―――

無理もない。そこに来て初めて、ジルドは憤怒と憎悪以外の感情―――殺気を発し始めたのだ。
「お、おい待て。その剣の間合いには姫君がいるんだぞ。まさか」「教えてやろう」
一度ならず二度までもディリスの言葉を遮るジルド。
「八爪の担い手は…剣を振るだけが能ではない」
サンチェス兄妹を見据え、誰に向けるわけでもなく構えた剣を、ゆっくりと握り直す。周りを囲む男達はさっと身構え、サンチェス兄妹も微かに身をたじろがせる。
セリーヌへの興奮とジルドに対する恐怖が、否が応でも兄妹の胸を高鳴らせ、荒げた息は白く染まり―――
「…?」
ふと、アメリアは疑問に思った。
地下室は地上に比べ寒いが、今は十数人もいるため、熱がこもっているはず。あせが流れるならともかく、吐く息が白くなるとはどういう事か。
「お兄様…」
その疑問を口にしようとした、まさにその時。


「…散れ、凍結の氷鱗っ!」
刹那、ジルドの巨剣から、炎ではなく、冷気が放たれる。
地下室を満たした冷気はジルドを囲む男達にまとわりつき、数瞬の後にその体を氷漬けにしていく。
サンチェス兄妹は冷気によって壁に叩きつけられ、手足のみを固定される。
「なっ!氷結だと!?」
「”滅びの巨剣”が操るのは、業火のはず!」
突然の事に狼狽する二人。だがジルドは意に介さず、氷像と化した男達をどけてセリーヌに駆け寄る。
「御無事ですか、姫」
「…あ、ああ……」
拘束を解かれ、縛られていた手首をさすりながら、セリーヌは頷く。その様子に、ジルドはようやく安堵の息を漏らす。
が、すぐに顔を引き締めると振り返り、壁にはりつけられたままのサンチェス兄妹を睨みつける。
「やはりそうか。俺の事を”滅びの巨剣”と呼ぶのは、”奴”の手の者だけ」
その言葉にディリスは、しまった、と顔を背ける。一方のアメリアは、ジルドを凝視したまま固まっていた。
憤怒に満ちた彼の表情に、凄惨なものが加わったからだ。
「ならば、貴様らの主に伝令を頼もう……その身をもって」
言いながら、傍に置いてあった瓶―――ブラッディ・ローズを取る。それを見て、二人の顔色が明らかに変わった。
「数多の女性に使っているそうだな。なら、流石にこれの効力はわかっているだろう?」
焦らすわけでも、いたぶるわけでもなく、淡々と言う。だが二人にとってみればそれは、益々恐怖を煽るかのよう。
「や、やめろ!」
「嫌、嫌ぁっ!」
瓶を片手に迫るジルドから逃れようと、必死にもがく。

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