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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 30

 その言葉に、アグネスと近侍らは頷き、アイザックの後へ続こうとする。
「待て」
「は?」
 だが、ジルドは一人、扉の前に胡坐を書いて座り込む。
「俺は、ここでいい」
「…ここ、とは?」
 アイザックはその発言の意味を図りかねて尋ねるが。
「一国の姫君が泊まる故、不寝番ぐらいの用心は必要かと思うが?」
 ジルドは、当然のようにうそぶいてみせる。
「? そんなことは」
 その意味に気づいたアグネスが、解せぬように呟きかけるが。
 近侍に任せればよいではないか――
 口に出掛かった台詞を、アグネスは押さえ込んだ。
 そう、確かに、それだけでは危ない。
 リオーネが本気で何か仕掛けてくるのであれば、近侍の二、三人では到底太刀打ちできぬ。
「…それではジルド殿の負担が大きすぎる」
 アグネスは、即座に断じた。
「殿下の室内で待機するのが良案かと思われるが」
「な、なんと!」
 アイザックが驚愕の声を上げるよりも早く、近侍のうちの一人が叫んだ。
「そ、それはこの者が姫君と二人きりになるということですぞ」
「確かにジルド殿は我らを救ってくれた。が、こればかりは」
 されど、そのように異議を唱える近侍らを手で押さえた後。
「さればこそ」
 アグネスは、艶然と微笑んだ。
「私も、その任に当たろう」




「では、我と卿らが――」
 それから、しばらくの後。ホテル・リオナ・トリオンフォンテの一等室の中。
「同じ部屋で、夜を過ごすというのだな?」
 ジルドらの提案を受けた姫は、何か思うことがあるかの如く、眉をひそませたまま。
 そんなセリーヌの様子を見て、ジルドは先ほどから、

 その、俺は別に外でもいいんだが――

と言わんばかりの目でアグネスに無言に訴え続けているのだが。
「リオーネに向かう道中ジルド殿が言ったように、この町には黒い噂があります。それは姫様を亡き者にしようとする不逞の輩やも知れません。そのような不測の事態に対応するため…とお思い下さいませ」
アグネスは、あくまで三人が同じ部屋で夜を明かす事を求める。しかも、もっともらしい理屈まで付け加えてくれるものだから、反論のしようがない。
「…そうか、我の安全のためか……ならば、許そう」
セリーヌは、案外簡単に納得してしまった。こうなると、残るはジルドだけである。

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