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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 29


 ホテル・リオナ・トリオンフォンテ。

 古ルクセン語で『勝ち誇るリオーネ亭』と名づけられたその宿は、その名に恥じぬ立派なものであった。
 足元の磨きぬかれた大理石の床に敷かれるのは、地元リオーネ自慢の真紅の絨毯。
 柱や壁面には、異国の様式を取り入れた独特の装飾が深く彫り込まれている。
 そして上を見上げれば、当代最高の画家たちを集めて描かせた天井画が、いまにも躍動しそうな勢いで眼前に迫ってくるのだ。
 その豪奢さは、在りし日の帝都リューンブルグを思い起こしても、これほどの宿はなかったであろうと思わせるほど。
 リオーネ行政委員アイザックに案内されて入ってきた皇女の近侍らは、その美しい室内装飾に素直に感嘆の声をあげたが。
 その主たるや、儀礼に反さぬ程度の賞賛しか口に出さない。
「殿下のために、最高級のお部屋をご用意致しました。こちらでございます」
「うむ」
 皇女の素っ気無い態度に、いささか鼻白むアイザックではあったが、すぐに気を取り直し、階上、中央の部屋に案内する。
「どうぞゆるりとお休みなさいませ」
「大儀であった」
「はっ」
 そう言うや、ささと扉を閉めてしまう。
 アイザックだけでなく、近侍らまで、その態度にはてと首を傾げたが。
 皇女の気持ちを悟ったジルドとアグネスは、互いに顔を見合わせて苦笑する。
 セリーヌは、自分に付き従って戦ってきた兵らに、ねぎらいの言葉をかけてやりたかったのだ。
 そんな内情など露知らぬアイザックは、姫の不興を買ったのかと内心怯えながら、殊更に礼儀正しく彼らに応対する。
「さて、アグネス閣下や近侍の方、それに…そちらの戦士様には、それぞれ別室をご用意してあります。どうぞ、こちらへ」

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