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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 28

「…ならば、仕方ない。そちらの通りにしよう」
セリーヌは納得いかないようではあったが、彼女は国を失ったとはいえ一国の姫君。ここで厚情を蹴ってしまっては、リオーネの面子はなくなる。それは後々、どこかしらで不都合を生じてしまうであろう。
個人としては兵と共にいたかったが、一時の感傷に判断を誤ってはいけない。彼女の心は、そう割り切ることにした。
「アグネス、お主もそれでいいな?」
「…それが、姫の御意志であるならば」
隣に控えたアグネスは、恭しく一礼する。
「では、御二方を宿に」「ちょっと待った」
セリーヌの後ろに立ち、これまでずっと押し黙っていたジルドが突然、アイザックの言葉を遮るように声を放つ。アイザックは一瞬眉に皺を寄せるが、流石にこういった事には慣れているのか、すぐに元の愛想笑いに戻る。
「はい、何用に御座いますか」
ジルドは腰に手をやる。そして、そこにぶら下げた金袋に手をやると、それをそのままアイザックの前に置いた。
「姫君と同じ宿を取りたい。これで足りるか」
その言葉に、アイザックは呆気にとられる。セリーヌの後ろに控えていたジルドの事は、兵士の一人なのだろうと思っていたからだ。
「…構いませんが…何故?兵士にはこちらの兵舎を御用意すると申し上げたはず…」
「俺は単なる流浪の剣士だ。成り行きでリューンの兵士達と来たに過ぎない」
それを聞いていたアグネスには、彼の意図が何となく読めた。
初めて会った時、彼は「姫君に用がある」と言っていた。しかし、セリーヌに会って以降も何か行動を起こすわけでもなく、こちらに協力する姿勢を見せている。
とすれば、彼はまだ自分の用を済ませていない事となる。そうなると、姫に万一の事があっては都合が悪いのであろう。
「…畏まりました。幸い、今日は部屋が空いております。御二方同様、すぐに用意させます故」
アイザックはそれだけ言うと、傍に控えていた小間使いに伝言を託した。
「…では、御三方を宿に御案内しましょう」
「済まないな、ここまで尽くしてもらって」
立ち上がったセリーヌは、感謝を込めてそう呟く。すると、アイザックは困惑気味に恐縮する。
「いえいえ、そのようなお褒めの言葉を頂く程のものでは御座いません…どうぞ、こちらへ」
三人を扉の向こうへ促すアイザック。そして、人のいない事を確かめて扉を閉めた。



その中に、人ならざるものがいた事に気付かず。



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