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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 3



「……随分な状態だな」
帝都に程近い丘。うっそうと生い茂る森の中で、燃え盛る王都を見下ろす者がいた。
「まさか、リューンブルグが落ちるとは…信じがたいな」
その言葉とは裏腹に、口調はあくまで落ち着いている。
「しかし……これなら容易い、か」
背に負う巨剣を降ろし、静かに鞘から抜く。微かな鞘走りの音の後、複雑な形状の刃を持つ剣が姿を現す。

「…いくぞ、相棒。まずは礼節やいたわりを知らない奴に、きつい灸を据えてやるぞ。そしてその後は……長らく待ちわびた姫君との御対面だ」
風が凪ぐ。その時には、その場にいたはずの気配は跡形もなく消え去っていた。

「者ども! リューンの精鋭ぶり、とくと見せ付けてやるのだ!」
 アグネスの声に、兵士たちが鬨の声をもって答える。
 第一環状線を突破し、南正門より宮殿に押し入ろうとするオークの軍勢はおよそ千五百。対してこれを阻止する兵の数は三百弱。到底抗いきれる数ではない。
 しかしその面々はいずれも、これまでの数々の敗戦にも心動かされずに留まった、忠誠厚き精鋭たちである。また勝利者に許される略奪の権利をやっと手にした傍から、わざわざ死にに行く酔狂な者など、ことオーク如きにいるはずもなかった。
 それでも、敵の小頭たちは、圧倒的な数に頼んで配下をけしかけてきたのだが、狭い市街が仇となり、逆に混乱する始末。そこを逆に突入してやると、一部では壊乱の様相すら出てきた。

 これならば、十二分に時を稼げる――

 もとより勝てるとは微塵も思っていない。いつか、兵の力も尽きる。だが、ここを死守するのは、ひとえに友軍や市民、そして姫殿下の脱出の時間を稼ぐため。彼らさえ無事であれば、いつの日か必ずやリューンに再興をもたらすだろう。
 もとより我ら一団となって最後の一兵まで戦う所存。

 死ぬことは許さぬ。如何な事があろうと、必ず生き延びよ――

 頭の中に浮かび上がった主の言葉を振り払おうと、愛用の剣を握り締めるアグネスであったが。
 はるか後方、整列しつつある敵の隊列に気づき、その表情が変わる。
「ば、馬鹿な…」
 ゴブリンの石弓兵であった。
 決死隊は一丸となって敵の軍勢の中に押し入り、前線は乱戦に陥っている。ただでさえ視野が限られる市街戦であるのにこの状況では、遠くから敵味方の区別などつくはずもない。にも関わらず、敵は弓を構え、今にも矢を放つ態勢に入っている。

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