大陸魔戦記 20
脱兎の如く逃げ出そうとしたバラッティであったが、もとよりそれを見逃すシャンティではない。相棒の首根っこを掴んで満面の笑みを浮かべた。
「いけない娘」
「ひぃ」
シャンティのその笑みに、バラッティは顔面蒼白、もはや蛇に睨まれた蛙のように、ただ震えるしかできない。
「そうだ、決めました」
相棒を恐怖に陥れた、その笑みに、ふと、淫媚なものがよぎる。
「アレにしましょう」
その言葉に、バラッティはさらに顔を青くする
「アレ!? ってちょっと、シャンティ、アレだけは勘弁…」
「貴方を殺すわけにもいきませんから、しようがないでしょう。アレが、わたくしなりの精一杯の妥協策というものでしてよ?」
「マジ勘弁だって、他なんでもするからっ…」
「問答無用ですっ」
そう叫ぶと、銀髪のダークエルフは相棒の服を脱がしにかかった。
エルフの服は、森を俊足で駆けるべく、例えそれが戦用の物であっても軽装であるのが常。バラッティの服とて例外ではない。シャンティの手際よさに、あっという間に下半身を露にされてしまう。
「あら、もうこんなになって」
「…」
「それにしても、貴方の物は素敵ですわね。艶といい、張りといい、本物の男のそれと遜色ありません。それに」
「金玉がついてない、って言いたいんだろうが…」
そう、バラッティの股間には、女には生えているはずのない男の象徴が、高々と聳え立っていた。男の物と明らかに違うのは、周りの褐色の肌よりなお薄い桃を思わせるその色と、その麓にあるべき睾丸が見当たらない事のみ。
「そうですとも、あの皺くちゃの、見るだけで吐き気がするような醜悪な精巣。あんな物をぶら下げている、ただその一事のみにおいても、男は滅ぼすに値すると思いません?」
自慢の男不要論を朗々と弁じるシャンティに、バラッティはもはや開き直るかの如く吐息する。
「…もう、好きにしてくれ」
「あら、つれない態度ですこと」
「当たり前だ」
嫌々な態度の相棒にシャンティは頬を膨らませたが、しかしそれも一瞬のこと。
「ここはそうは言ってないようだけど?」
そういって、その薄桃色の亀頭の先端を舐め上げる。
「んっ!」