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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 151


「トリアグネに伝言を。……『期待させてもらう』と」
結論は、承諾。
瞬間、ナイフの如き視線が引っ込み、ジルドの口に笑みが浮かぶ。それを見て、男は思わず胸を撫で下ろすが、すぐに気を引き締め直立不動の姿勢をとった。
「承りました。では、正午に領主館の前で」
「わかった」
短いやりとりの後、男は「では、失礼します」と言ってその場から立ち去り、ジルドは扉を閉める。そして、鍵を閉めて部屋に戻ると、剣を鞘に収めソファに腰掛けた。
欠伸が一つ。
(……やや警戒心が薄れている、と考えるべきだろうな)
一人考えるジルド。背を丸めて顎に手を当てながら、窓の向こうを見つめる。
(出立の上でこれはまずい。早いうちに感覚を元に戻さないと……)
その様子には、少々の緊迫感が漂っている。どうやら彼にとっては、「やや」が危険域であるらしい。

――と。

「ん……」
間延びした声。ジルドは緊迫感をさっと覆い隠すが、振り向かない。声の調子と気配から、誰なのか程度はわかるのだ。
「……起きたか、セリーヌ」
「ん……ああ……」
身を起こし伸びをしたらしい彼女の口調には、眠そうな響きが混じる。
ちなみに彼女は、昨日の朝と同じく裸。結局何度もジルドに愛され続けたセリーヌに再び服を着る力など、残っているはずがない。
「……そうか」
だからジルドは振り向かない。
振り返れば、彼女の生まれたままの姿を直視することになるのは明らかだから。
「ふあ……ジルドは、起きるのが早いな……」
しかし、そんな事など露知らず、セリーヌは一糸纏わぬ姿でベッドから這い出る。
「……相変わらず卿は朝が早いな」
くぐもった声で呟きながら、ジルドの背に向かって歩み寄る。
ジルドは動かない。頬杖をつき、空の酒瓶を見つめるばかり。
「いろいろあってな。リズムがすっかり固まっている」
「そうか……」
真後ろにセリーヌが立つ。直後、寝起きらしからぬ素早い動きで、ジルドの体に腕を――

「……ただ、たまには朝寝坊の一つでもしてみたいと思う時がある」

――巻き付けようとして、するりとかわされた。それどころか、バランスを崩した所で抱きしめられ、いわゆるお姫様だっこの体勢にされてしまう。
「ひゃっ!?ジ、ジルド、離さぬかっ」
唐突な出来事に慌てたセリーヌは、ジルドから逃れたいのかじたばたともがく。
だが男女の差は如何ともしがたく、加えて彼女は力を入れづらい姿勢。挙げ句には頬にキスまでふりまかれ、体の力が抜けてしまう。
「……甘えたがりだな、セリーヌ」
翡翠の瞳に自分の顔が映る程に近く、顔を寄せる。
「昨日も腰が抜けるくらいしたのに、まだ足りないのか?」
そして意地の悪い事を聞いてみる。
――もっとも、どんな返事をされても朝からする気など彼にはないのだが。

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