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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 150

「……っ……」
突く。
振り上げる。
振り降ろす。
切り払う。
そして。

「……っ」

――叩きつける。
が、地面まで数ミリの所でピタリと止まる。
「……ふう」
ジルドは右手に握った剣を再び振り上げた後、小さな息を吐き出しながら肩に担いだ。静かに目を閉じる。
すると、彼の口からまた吐息。今度はため息に近いものらしい。

(……さて、ここから先はどうするか……)

目が開き、日の上り始めた空を見上げる。その目に、気だるさは見えない。
あるのは、普段の彼が持つ理性の火。
(懸念だった心的疲労も、予想外の回復を見せている。これなら、野宿が何日も続いたとしても、少しは平気なはず)
再び剣を前に構える。その切っ先を瞳に映しても、宿した火は揺るがない。
(……問題は、いつ出発するか。そして、どこへ向かうか)
再度振り上げた後、そのまま制止。刀身に風を受けながら、彼は静かに目を閉じた。
(……トルピアにはまだ、俺達の匂いは定着していない。ならば今日か明日が理想だが……)
剣を降ろす。
(……二人をどうやって説き伏せるか)
振り返る。向けた視線の先には、すやすやと寝息を立てて眠るセリーヌとアグネス。
「……ふぅ」
再び剣を向けた先に視線を戻した時、ジルドの口からため息ともつかないような息が漏れた。

ドアを軽く叩く音。

ジルドの目つきが変わる。
さっと身を翻し、ベランダへの窓を閉じて部屋の玄関へ。片手には剣をしっかりと握り、まずは軽く呼吸。そうして、できるだけ友好的に見えるようにする。
「……はい」
傍目には眠そうに、しかしその実注意深く、ドアを開けた。
そこにいたのは、一人の男。その顔に、ジルドは見覚えがあった。途端に彼の表情は一転、鋭い視線で男を射抜く。
「……トリアグネの使いか」
「はい。領主様より言伝をあずかっております」
「わかった。この場で聞こう」
男の喉仏が動く。生唾でも呑み込んだのだろう。それから一拍置いて、男の口が開いた。
「昼食の席を用意致しました。その席にて、話をしたい……との事です」
「……」
ジルドの目が、疑いのそれに変化する。
相手はこてんぱんにしてやった男の父親。表面上は理性的だが、実際はこちらに怒りを抱いていてもおかしくない。そして、その父親はトルピアを治める領主。その気になれば自警団に働きかけ、自分達が毒殺されようと事実をもみ消すこともできる。
次々と浮かぶ事象、予想、推測。ジルドは男に疑いの目を向けながら、あれこれと考えてみた。
「……」
「……」
気まずい沈黙。

――その後。

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