大陸魔戦記 146
「……そんなに欲しいのか?」
「欲しいに決まっておろうっ」
「…そうか…」
益々苦笑。
このままアグネスが独占していると、きっとむくれるだろうな――ジルドは駄々をこねるセリーヌの姿を思い描き、内心肩をすくめた。
思い描いた彼女の様子はなかなか可愛らしく、見てみたい気もする。だが、そのためにセリーヌだけ置き去り、などというのは正直嫌いなジルド。
「…アグネス」
彼はなるべく早くセリーヌにかまってあげるために、いまだに愚息を舐めしゃぶるアグネスを呼んだ。
「んん…?」
アグネスは、ご丁寧にも亀頭を口に入れたまま上目遣いで彼に視線を向ける。その仕草がまた劣情をかきたて、ジルドは思わず身を震わせてしまった。
だが、今やるべきは体を快感に震わせる事ではない。彼はアグネスに行為を続けさせたくなる衝動を押さえつけ、彼女の口内から自身の肉欲の象徴を引き抜いた。
「ぷは……ぁあん、もっと味わわせてぇ…」
すると、彼女は不満げに舌を伸ばし、必死で顔を近付けようとした。それに対しジルドは、彼女の肩を掴んで押し止める。
「アグネス……君は一旦お預けだ。次はセリーヌの番だ」
「…お預けだなんて……やだ、いじわるしないでぇ…」
「……」
衝動をこらえたのだ、アグネスが駄々をこねても我慢できる――と思っていたジルドだが、その考えは案外甘かった。実際に目の当たりにしてみると、ジルド自身をねだるアグネスの口調と態度には、普段は絶対にお目にかかれないような妖しい艶っぽさ。それが、これでもかとばかりに漂っている。
ちょうど、朝になって帰ってしまう男を引き止める時のような、そんな状態。
それを見ていると、時間も用事も全て忘れ、再び彼女の体を貪りたくなる。
だが、ジルドが相手しているのはアグネスだけではない。それを自覚している彼は、アグネスが漂わせる誘惑をなんとか振り払った。
「…ちゃんと待っていてくれたら、後でたっぷりしてやる。だから…待てるな?」
――ただ、完全には振り払えず、妥協案を出してしまったのだが。対するアグネスは不満げではあるが、「たっぷり」という言葉に期待をしたのか、素直に頷いた。
そんな彼女の様子を確認してから、ジルドはようやくセリーヌの方に向き直る。
「……セリーヌ」
言うが早いか、彼女に口づけ。だが唇だけ。セリーヌが舌を伸ばしても、彼の唇は閉ざされ、来客を拒むばかり。
――と。
「っ!?」
頬を、ジルドの唇が滑る。
その行き先は耳。戸惑うセリーヌを余所にすぐたどり着く。
そして、耳朶を甘噛み。
「ふぁ……っ!」
首筋を舌が伝う。
「は、ぁあ……っ」
鎖骨をなぞり、豊かに実った果肉の間に唾液の後を残す。
「んっ、んぁあっ」
瞬間、乳房に官能刺激。片方に引っ張られる感覚と、もう片方にぬめった感覚。