大陸魔戦記 139
理由は明解。アグネスが右手を後ろに回し、勃起したままの陰茎を捕らえたのだ。
彼女の手は、泡立てたスポンジでごしごしと体を洗うセリーヌからは、ちょうど死角になっている。それをいい事に、湯船の中でアグネスは捕らえた怒張を指先で刺激し、ジルドを弄び始める。
「…気持ちいいが…少し、熱いな」
振り返ったまま、アグネスが一言。一瞬、湯加減の事かと思うジルドだが、すぐにそれは違うと思い知らされる。
「熱いのは…ジルドがいるから、か?」
不敵な笑み。直後、怒張が水中で弾かれる。
刺すような刺激。だがそれは一瞬の事。ジルドは喉まで出かかった声を、なんとか飲み込む。そして、セリーヌに気取られぬよう、努めて平静を装う。
「お…俺の体温は、そんなに高くはないはずだが…」
「そうか?私には、随分と熱く感じるがな」
指の腹が鈴口を押し撫でる。
「な、なら…ア、アグネスの体温が低いのだろう…」
「いいや、私は意外と高いぞ?だから、ジルドが…」
再び弾かれる。
「…高いはずだ」
「っ……だった、ら…湯に長く浸かって…っ!たのが原因だろう」
手全体で擦られる。
言葉とともに与えられる、甘美にして鈍い刺激。ジルドは何とか堪えようとするが、なかなかアグネスは巧みである。
やはり、経験者のなせる技であろうか。
「…んぅ…」
と、不意に艶めかしい声が耳に入った。快楽に悶えながら、ジルドはその出所を探る。
すると。
「…ぅ…ふぅん…っ」
再び。明らかに近い。
その事に、ジルドの額を再び冷や汗が伝う。
「…どうし、ぁ…た?急に…ん…黙って…っ」
――原因判明。
アグネスが自身の左手を前にやり、あろうことか自分の秘裂を弄り始めたのだ。
(い、いくらなんでも、これはまずいだろうっ!)
ジルドはすっかり狼狽えてしまい、じたばたともがき始める。
「…どうしたのだ、ジルド。突然ばたばたし始めて…」
そのさまは明らかに露骨。当然、一人離れた所にあったセリーヌも気付く事になる。そして、その事にジルドはますます慌ててしまう。
「え?あ、いや、な、なんでもないっ」
結果、どう考えても怪しい物言いで、ぶんぶんと首を振る羽目になる。
「…何かあるという顔をしておるぞ?」
当然セリーヌは、それを訝しく思う。
「…まあ、よいか」
だがどういうわけかすぐに向き直って、体を洗う作業を続ける。
知っててわざとやっているのか、それとも本当に気付いていないのか。ジルドは頭に疑問符を浮かべる。
しかし何にせよ、これは好機。疑問符を振り払った彼は、増してくる快感に身を委ねそうになる寸前で、アグネスの両手首を掴んだ。すると彼女の口から「ぁんっ」という艶めかしいため息が漏れる。