大陸魔戦記 138
しかもジルドの太股に柔らかくすべすべした美尻を乗せ、胸板に背中を預けている。
肌に触れる二つの感触は非常に心地よく、寄りかかる彼女の姿は扇情的で、ジルドの『男』はたちまち息を荒げ始めた。
だが彼は、深呼吸を繰り返して無理矢理気分を落ち着かせようとする。きっとセリーヌやアグネスがおちょくってくるであろうし、なるだけゆっくりと湯浴みをしたいのだ。
――だが。
「…なんだか、胸が高鳴ってしまった…」
そんなジルドのむなしい努力を打ち壊すかのごとく、セリーヌはもぞもぞと体を揺すり始める。
それは触れあっている肌を擦る行為にも繋がる。その結果として与えられるのは、心地良い刺激。
「…そ、そうか…」
素っ気ないふりをしてみても、その触れ合いは確実に情欲を煽ってくる。
しかも、煽られて増長する情欲は、自身の内から出るもの。いくら理性を鋼の心で覆ったとしても、内からの浸食は防げない。
そうこうしているうちに、ジルドの愚息はどんどん立ち上がり――
「セリーヌ、次は貴方の番ですよ」
アグネスの呼びかけ。それに反応したセリーヌは、「そうか」と言って湯船から上がった。
危うい所で去ってくれた危機。ジルドは思わず、安堵する。
――しかし、それは早計だった。
「…では、次は私が湯船に入る番だな」
アグネスの声。ジルドははっとなり、慌てて上を見上げる。
するとそこには、アグネスがいた。彼女は意味深な笑みを浮かべ、ジルドを見下ろしている。
――とは言っても、見つめているのはジルドの顔ではないらしい。視線が僅かにずれている。そう、ちょうどジルドの体の――
(…って、まさか…!)
湯気の雫に混じって、ジルドの肌を冷や汗が流れる。
アグネスが見ていると思われるのは、ちょうど下腹部。すなわち、セリーヌの感触によって勃起してしまった、ジルドの怒張。
(しまった…)
内心で自分の油断を責めるが、後の祭り。今更何をしようが悔やもうが、もう遅い。
こうなったら、せめて堂々としていよう――そう、覚悟を決めた。
――だが。
「失礼するぞ、ジルド」
アグネスは、何食わぬ顔で浴槽に入ってきた。何か来るだろうと身構えていたジルドは、面食らってしまう。
「…ふう」
入ってきたアグネスは、ジルドに体重がかかる事を気遣ったのか、折り曲げた彼の両足の間に割って入り、背中を丸めた。結果、ジルドの陰茎はアグネスの肌を撫でず、湯の中で存在を主張する事になる。
どうやら、気付いていないか、気付いて無視を決め込んだか――そんな事を思っていると、アグネスが肩越しに振り返った。
「…気持ちいいな、ジルド」
微笑む。と同時に発せられたその言葉に、ジルドは相槌を打とうとして口を開き――
――息を呑んだ。