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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 136

しかし、アグネスは反論を一蹴するだけでなく、言葉を畳みかけ、ジルドに反論の隙を与えない。
そうした後で彼女は、反論の気力すら失せてしまったジルドに向かって、小さなため息をついた。

「……だから、先に入ってください」

そして呟き。
それを前にしてジルドは、肩をすくめながら立ち上がった。

「……わかった。先に入ろう」
「そう。それでよいのだ」

すると、待っていましたとばかりにセリーヌが笑みを浮かべる。

「…なるべく早めには済ませよう」

しかし、浴室に向かう彼は、その笑みに気付かない。
彼はまず脱衣所からタオルを取る。それから戻り、自分の荷物を置いた所で片膝をつくと、荷物の中から自身の下着を取り出し、タオルで包む。
そして再び脱衣所に向かい、扉を閉じた。

――沈黙。

「…なあ、アグネス」

――だが、セリーヌは笑みが崩れない。
その様子に、アグネスは怪訝な顔をする。

「…なんですか、セリーヌ」
「手間が省けたようだな」
「……?」

――言葉の意味がわからない。謎めいたその呟きに、アグネスは益々眉をひそめる。
一方、セリーヌには、その態度は少々意外だったらしい。
彼女はため息をつき、アグネスの鼻先に人差し指を突きつけた。

「…領主館への道の中で我をなだめた時、卿は言うたであろう」

その言葉に、アグネスはしばし考え込み――

「……あ、あの事ですね」

口元に、笑みを浮かべた。
――悪戯心に満ちた、小悪魔を思わせるそれを。

「…やりましょうか」
「ふふ…ジルドの困り顔が頭に浮かぶぞ」

「……っ」

寒気。
さっと服を脱いで裸体となったジルドは、慌てて浴室へと移る。だが、移った後で首を傾げた。

(ん…?裸になると寒気がする程、晩夏は寒かったか?)

訝しく思いながら、湯船に湯を張り、シャワーを浴びる。

降り注ぐ熱い雨。
肌を伝う滴。
その中で髪を濯ぎ、肌の上で乾いてしまった汗の残滓を洗い落としながら、今度は別の事をジルドは考える。

(…亡国…姫君…愛……それが手がかりの、『欠けた記憶』……)

――託されてしまった、謎解きの事を。

(三つの手がかりが当てはまるのは、今のところセリーヌのみ……だが、一体どんな記憶だ…?)

シャワーを止める。
まだ半分もたまっていない湯船の中に腰を下ろす。

(……だめだ。やっぱりわからん)

熟考の後、結局諦めるジルド。
――実は、もう何度目かになるのだが。

(…少なくとも、急がねばならないというのだけはわかるんだがな…)

眉間に皺が寄る。
半分くらいはたまってきた湯に浸かりながら、彼は一人かぶりを振った。

――と。

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