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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 120


それだけ言うと、彼は男に背を向け、後ろにいたセリーヌとアグネスを交互に見て、首を縦に動かした。
話は終わった――そういう事らしい。
それをきっかけに、辺りに騒々しさがよみがえった。人混みが動き、再び人の往来が始まる。付近の店から、活気に満ちた声が戻る。そして、その流れに従うように、ジルドは二人を伴って歩いていく。
その背中を茫然と見ていた男は、噴水広場に来る時に引き連れていた取り巻き達に助け起こされ、ようやく我に返ったのだった――



「…なあ、ジルド」

噴水広場から離れた、とある食事処。温暖な気候のトルピアに合わせた涼しげな装飾と、完成度の高い料理が人気のそこで、アグネスは向かい側に座るジルドに声を投げかけた。
――ちなみに彼女の前には、具が詰まったグラタンが置かれている。

「先程の男は、一体何者だったんだ?」

端の方にぽっかりと穴が空いたグラタンはそのままに、彼女は問いかける。対してジルドは、無表情で小さな息を一つ吐き出し、どこか憂鬱そうな顔に変わった。
「…レグス・トリアグネ。トルピア領主、ライフォン・トリアグネの御曹司だ」

その言葉に、パスタを口にしていたセリーヌが顔を上げた。

「トリアグネ…民を第一に考える良心的な領主と聞いていたが」
「そうだ」

彼女の問いに、ジルドは頷く。

――ライフォン・トリアグネ。
『事はすべからく穏便に』が信条の、トルピア領主。争い嫌いの温厚な性格ではあるが、政治手腕や交渉術に関しては目を見張るものがある、なかなかの切れ者。
トルピアが『媚売りの名手』と揶揄されるゆえんでもある。

「だが、あの男を見る限りでは、とても御曹司には思えんな…」

口元を丁寧に拭いながら、セリーヌは正直な感想を口にする。ジルドはそれを聞いて、ため息まじりにぼやいた。

「両親共に子煩悩だったらしい。幼少の頃から甘やかされて、自分本位な性格が形成されたようだ」

そこまで言うと、グラスに残っていた水を一気に飲み干す。そうして空になったグラスを片手にウエイトレスを呼び止め、丁寧な口調で水の追加を頼んだ。
ウエイトレスが厨房にひっこむのを見送り、ジルドは再び二人の方に向き直る。

「…一つ聞いていいか」

そう言ったのはアグネス。彼女は半分まで食べ終わったグラタンはそのままに、少しだけ身を乗り出す。

「お前、そのレグスと何かあったようだが…何かしたのか?」
「した」

即答するジルド。アグネスは思わず眉間に皺を寄せるが、彼はすぐに言葉を続ける。

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