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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 119

男の、そしてジルドの意図が理解できず、彼女は思わず身構えてしまう。

「安心しろ。今回は単なる観光客であろうと思っている」

一方、彼女の心情などいざ知らず、ジルドは男に向かって不敵な笑みを投げかける。

「…不穏な噂を掴んだり、こちらに危害が与えられたりしない限り、だがな」

――背負う剣の柄に手を持ってくるという、示威とともに。
それらが絡み合った一連の動作に、男の頬を汗が伝い落ちる。しかし、こちらも不敵な笑みはそのままに、今度はジルドの背後で身構えていたセリーヌとアグネスに目を向けた。
「危害、ねぇ……」

品のない、値踏みするような視線。
思わずアグネスは、セリーヌを守るように身構えてしまう。すると男は、先程までの恐れはどこへ行ったのやら、勝ち誇った表情で機嫌が良さそうに、べらべらと喋り出す。

「…あん時てめえは言ったな。『俺はお前のように、小細工で女性の心を掴むような事はしない』って。ひと月前の話だ」
「…それがどうした」
「わかんねえな。『長い間、恋人はおろか旅の仲間すら持った事はない』って言ってた奴がどうして今、二人も女を連れてるんだ?あぁ?」

男は苛立たしそうにジルドを睨みつける。

「少なくともひと月の間に、出会った女と旅ができる程親密になれるだなんて聞いた事がねえな。口では俺の事を批判してたが、本当はどうなんだ?」
「…相変わらず言いたい事がわからんな」

ジルドは、うんざりだといった様子でかぶりを振りながら、さりげなくセリーヌ達を庇う体勢をとる。その間に男は益々饒舌になり、言葉の勢いを増していく。

「白状したらどうだ?口や態度じゃ『女の味方』なんてやってるが、腹の底は女を自分のものにしたくてたまらねえんじゃねえか?」

「おい、お前…」

流石にその言葉には、アグネスが反応する。
彼の正体はわからないが、少なくとも彼がジルドを侮辱しているのだけはわかったのだ。
――しかし、詰め寄ろうとしたアグネスの体は、前にいたジルドが後ろ手に押しやる事で止められた。

「ジルド…!」
「気にするな」

彼は、小声で呟いた。

「はっ!随分と仲がいいこったなぁ!やっぱりてめえも」

――鞘走りの音。
直後、男は押し黙ってしまう。
同時に、周りの騒々しさも封じられた。
――何故ならば。


「…やはり変わっていない。何から何まで」


ジルドが剣を抜き、その切っ先を男の眼前に突きつけたのだ。

「言うのは勝手だ。だが、悪態をつくために俺の前に現れたのなら…去れ」

彼はすぐに剣を収めた。すると、眼前に突きつけられた『死の恐怖』から解き放たれた安堵からか、男はその場にへなへなとくずおれる。
しかしジルドは構う事なく、その情けない姿に冷たい視線を投げかける。

「観光目的だというのは、確かに伝えた。余計な因縁は慎め。それだけだ」

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