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大陸魔戦記
官能リレー小説 - ファンタジー系

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大陸魔戦記 118

「…こういうリゾートの町には、ああいうゴロツキが一人はいる」

彼女の呟きが聞こえたらしいジルドは、吐き捨てるように答えた。その言葉に、アグネスは眉をひそめる。

「…ならば、ここにいては余計な因縁をつけられます。ジルド、セリーヌ、帰りましょう」

そう言って、セリーヌの手を取るのだが。

「待った」

ジルドの手が、セリーヌの手を取ったアグネスの手を取った。ジルドは二人を交互に見てから、噴水広場に向かってくる男を見やる。
「…連中は俺に用がある。だから本来は君達二人だけでも隠れてもらいたいが、俺の知らない所で君達二人に何かあって欲しくない。悪いが、少し付き合ってもらう」

形は有無を言わさぬものだが、その響きは頼むような言葉。
セリーヌとアグネスは互いに目を合わせると、空いている手でジルドが持っていた袋を受け取った。

――そのうち、噴水広場にいた人々も退いていく。
そして、噴水近くにいるのがジルドら三人だけになった。
同時に、取り巻きを引き連れた男も、噴水広場にやってくる。
男は付いて来る取り巻き達を片手で制すと不敵な笑みを浮かべ、まっすぐジルドの方に向かってきた。対するジルドは、袋を持った二人を庇うように立つと、涼しげながらも不敵さを含んだ笑みを浮かべ、男を見据える。

――男が、立ち止まった。


「久しぶりだなぁ…ジルド・ネリアス」

まず口を開いたのは、男の方。男は棘のある口調で、ジルドの名を口にする。
すると、それに反応してか、男の登場によって生じた静けさが一転し、ざわざわと騒がしくなる。
しかしジルドは、その騒がしさと、男の口調にまじった棘など気にも留めていないようだ。

「…その様子だと、あまり態度を改めてはいないようだな」

それどころか、威圧するような雰囲気を漂わせ、男と相対する。

「へっ、てめえの説教なんざ、痛くも痒くもないねぇ」

男も負けじとばかりにふんぞり返る。

――しかし。
武人である故か、ジルドの背後からその男を見たアグネスは、男の態度の中に、全く異なる感情がある事に気付いた。

それは、ジルドに対する「恐れ」。

彼女はそれに、疑問を持った。
男とジルドのやりとり、そして男が自らやってきた事から察するに、二人は顔見知りらしい。更にジルドの言葉からして、何かあったのは明らか。そしてその「何か」が、決して友好的なものではないという事も、推し量るには容易い。

――ならば、男がわざわざジルドと対面するのは何故か。普通なら嫌な記憶を刻みつけた相手とは、顔を合わせたくないであろうに。

――そしてジルドも。何故、友好的でない者と顔を合わせるのか。

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