大陸魔戦記 107
「「そのジルドに…」」
熱い吐息と。
「「心も、体も、全て…」」
甘い言葉と。
「「…奪われてしまった」」
切ない告白が。
――こぼれる。
「……」
狼狽える心が止まり、吹きかけられた甘い響きに、しばし酔う。
「…俺は、奪ったつもりなど…」
酔いから覚めやらぬジルドは我知らず、愚問を口走る。セリーヌもアグネスも、その問いには思わず苦笑してしまった。
「卿は、確かに奪ったであろう」
セリーヌが、ぞくぞくする程色香に満ちた声を吐き出す。
「深く体を繋げた上に、心までも鷲掴みにした」
アグネスが、理性を瓦解させ得る妖しい吐息を浴びせる。
「…う……」
左右からの吐息に、ジルドは思わず呻く。同時に、やはり男の悲しい性か、萎びていたはずの愚息が、 むくむくと立ち上がり始める。
それを見逃さなかったのは、アグネス。彼女は存在を誇示し始めた男根を掴み、いやらしい手つきで弄ぶ。
「ア、アグネス…弄るな…」
「素直だな、ここは。ジルドの欲求を代弁してくれる」
彼女は息を荒げながら、それを握り続ける。
「…だめ…そそり立ってるこれを見てると…すぐに疼いちゃう…」
その目に欲情の炎が燃え始める。呼吸の間隔が狭まり、弄ぶ手の動きも次第に速くなっていく。
「…もう、問答は後にせよ」
セリーヌの舌が伸び、ジルドの耳朶を舐め上げる。何かがはぜるような気持ちよさが彼の体を襲い、喉の奥から更なる呻き声が響く。
「…先程のまぐわい…その時のアグネスの喘ぎが、我の体まで疼かせておる……」
身に纏う寝間着を、鬱陶しそうに脱ぎ去る。それからジルドの手を取り、濡れそぼった自身の秘所に導く。
「…鎮めて、くれ…アグネスと一緒に…」
目を見開くジルド。しかし状況を上手く飲み込もうとしても、頭が良く回らない。
耳に吹きかけられる、熱く甘い吐息。
腕に寄り添う、暖かく柔らかな感触。
指に触れる、熱いぬかるみ。
股間から体中をめぐる、耐え難い快楽。
それら全てが、ジルドの理性を砕いているのだ。
それでもジルドは、なんとか身を起こし、二人に何か言おうとするのだが。
「…もう、我慢できない…」
アグネスが、切ない視線を見舞う。
「…じらさないでくれ…」
セリーヌが、声を震わせる。
――残された一欠片の理性が、粉々に砕かれた。
「……」
「ひゃっ!」
「あっ!」
腕にしがみつく二人を振り払うと逆に抱きしめ、寝台に押し倒す。組み敷かれるとは思っていなかったアグネスは驚きの声を上げ、その気になったのだと認識したセリーヌは嬉しそうな声を上げる。