大陸魔戦記 101
「…あぁ……」
たっぷり見物してから、ようやく顔を近づける。
そそり立つ肉欲の象徴に寄せられた唇が開かれ、そこから赤く小さな舌が現れる。一度、伸ばされた舌は躊躇いがちに引っ込みかけるが――
――ペロッ
意を決してジルドの陰茎に張り付き、一筋の足跡を残す。それにより躊躇いが消え去ったのか、アグネスは恍惚とした表情で再び舌を伸ばした。
「…ん…んふ……ちゅ、れろ…ふ…じゅる…」
躊躇いを含んでいたらしい最初の一舐めが嘘であったかのように、盛んに這い回るアグネスの舌。
根元からカリまでの道のりを何度も行き来し。
尖らせた舌先で亀頭をちろちろとくすぐり。
鈴口から漏れだした液体を吸い上げ。
丹念にして執拗な責めに、ジルドはただ悶えるばかり。
「うぅっ…くぁ…ア、アグネス…っ!」
「…いい…ジルドのオチ○チ○…すごくおいしい…」
待ちに待ったご馳走にありつくアグネスは、ジルドが喜悦に翻弄されている事など気にかけず、一心不乱に陰茎の熱さと硬さ、そして独特の味を堪能する。
――と、舐め続けるのに疲れたのか、不意に舌が離れた。間断なく浴びせられていた快感が急に止まる。
男の悲しい性(さが)故か、ジルドの心に不満が微かに生まれる。しかし、ジルドらしいと言うべきか、それはすぐに、ようやく一息がつけるという安堵に埋もれ、潰されてしまった。
「…なかなか可愛いな」
ぽつりと、思った言葉がこぼれ、空気に見えない波を起こす。その内容に、アグネスの目に宿る欲情の炎が、理性の火に変わる。
彼女は、信じられないといった様子で、ジルドの目を見つめた。
彼女の瞳は、疑問を示していた。
本当か――という、疑問を。
それを事もなげに感じ取ったジルドは、アグネスの頬を自身の手でさする。
「本当だ。まるでミルクを求める子猫みたいで、愛くるしい。抱きしめたくなってしまう」
――傍目には、陳腐であからさまな世辞のよう。
しかしアグネスの心は、不思議と暖かくなっていた。
何故なら、ジルドは言葉だけでなく、彼女の体を引き寄せて抱きしめる事で、態度でも示したのだから。
「…前言を撤回しなければならないな」
ジルドが、呟く。
「君となら、一時の感情に流されるのもいいかもしれない」
「…戯言は大概にしろ。お前には姫様がいるだろう」
ジルドの言葉に、アグネスは厳しい言葉を返す。しかしその口調には拒絶の響きはなく、その表情はまんざらでもなさそうだ。
「そういう口は、終わってからにしろ」
再び甘い響きを含み始めた口調で言いながら、アグネスはジルドの背中に片腕を回し、抱きしめ返す。一方でもう片方は下腹部を下り、勃起したままのジルドの陰茎をさわさわといじる。
「…満足するまで、もらうぞ。覚悟はできているな?」