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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 6

…つまり、その退却して来るという将校と合流し、三人で敵の追撃を逃れながら、スールの街の司令部まで連隊旗を持ち帰れ…という事である。
(冗談じゃないよ!!死にに行くようなもんじゃないか!!)
…とアレスは心の中で盛大に中佐に突っ込んだ。しかし中佐の口振りからして、どうも強制ではないようだ。アレスはチラリと少女の方を見て思う。
(断るよな…?さすがに…)
すると少女は顔を上げ、中佐をキッと見据えて言った。
「了解しました!!身に余る大任、有り難くお引き受けいたします!」
「ええぇぇぇっ!!!?う…嘘でしょうっ!!?」
アレスは思わず悲鳴に似た声で尋ねた。…が、中佐と少女には届かない。
「おぉ!!引き受けてくれるかね!?」
「はい!隊旗は私達にお任せください!必ずやスールの司令部までお持ちいたします!」
「無理ですよ!!僕達二人だけでなんて…!!」
「ふむ、そうか?それなら…」
ようやくアレスの主張に気付いた中佐は部下達の方へ手を上げて叫んだ。
「…おぉい!シュルツェン軍曹はいるか!?」
「はっ!中佐殿」
兵隊達の中から一人の兵士が声を上げた。
「「…っ!!」」
アレスと少女はハッとした。
姿を現したのは何とエルヴァン帝国の軍服に身を包み小銃を担いだ20代半ばと思しき見目麗しい褐色の美女だったからだ。
「ダークエルフか…」
アレスがつぶやく。中佐は二人に紹介した。
「驚いたかね?彼女はシュルツェン軍曹、こう見えてメインランド=エルヴァン戦役にも従軍した歴戦の勇士だ」
ダークエルフの女軍人は二人の前に立ち、踵を合わせて敬礼する。
「エルヴァン帝国陸軍第3砲兵連隊所属、リタニア・シュルツェン軍曹と申します!よろしくお願いいたします、えっと…」
「あぁ、私はエリーゼ…エリーゼ・フレデリック少尉よ。よろしくね、軍曹」
少女が名乗った。そんな名前だったのか…と思いながらアレスも敬礼して名乗る。
「メ…メインランド王国陸軍歩兵第13連隊、アレス・ジャスティス二等兵であります!」
彼は半ば驚愕の思いで目の前の褐色肌の美女を見ていた。
(エルヴァン=メインランド戦役って言ったらもう50年以上も前の戦争じゃないか…う〜ん…エルフの年齢は判らないって言うけど…)
エルフは数居る亜人種の中でも特に長寿であり、平均で700〜800年…中には1000年以上生きる者もいる(もちろん怪我や病気が無ければの話ではあるが)。
目の前の美女が少なくとも70〜80歳を超えているなんて信じられない。それに気付いたのかリタニアはコホンッと咳払いしてから人懐っこい笑みを浮かべて言った。
「あぁ、ちなみに今年で258歳になります。まだまだ若輩者ですが、一つよろしく…」


三人は戦場の方へと向かって歩いていた。
すれ違う者は居ない。
さらに、山の向こうからひっきり無しに聞こえていた砲撃音は次第にまばらになり、やがて無くなった。
それはすなわち足留め部隊が全滅ないし降伏したという事を意味していた。
中佐の話によれば、多くの将兵が魔族軍によって、まともな抵抗もままならぬままに殺されたが、全員が全員そうではなく、捕らえられた者も決して少なくないとの事だ。
ただ、魔族に捕らわれた人間が一体どうなるのかは今のところ良く解っていないのであった。

「例えばですよ…」
アレスは言った。
「…最初に出会うのがその隊旗を持って後退して来た将校さんとは限らない訳ですよねぇ…」
「何が言いたいのですか…?」
アレスをジロリと睨み付けて聞き返す魔導師の少女…エリーゼ。
「いや、ですから…前進して来た魔族軍とバッタリ…なんて事になったら…」
「その時は死力を尽くして戦うのみです!」
「たった三人ですよ!?」
「ただの三人ではないぞ?」
リタニアがアレスに言う。
「勇者とエルフと魔導師だ。なかなか駒が揃っているではないかぁ〜♪」
「…スライムとすら戦った事の無い“勇者”ですが…」
「もう!何なんですかあなたは!?さっきからブツブツと…!」
どうも任務に対して乗り気でないアレスの態度に、ついにエリーゼがキレた。
負けじとアレスも言い返す。
「僕はまだ生に未練があるんですよ!あなたと違ってね!」
「二人とも!ケンカを止めて…!」
リタニアは仲裁に入りつつ前方を指差す。
「あれ!あそこ…!」
「「…?」」
アレスとエリーゼも目を凝らす。
…人が倒れているではないか。
良く見ればエルヴァン帝国の軍服に身を包んでいる。
「居た!」
「あの人だ!」
三人は急いでその人物に駆け寄った。

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