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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 5

「…実は私、ある貴族の私生児なんです…」
「あぁ…」
「何ですか?その“今ので全て理解した”みたいな顔…」
「い…いえ!失礼しました…それで?」
ジト目で睨む少女にアレスは慌てて謝り、続きを促す。
「…父は小さいながらも領地を持つ伯爵でして…今から約15年前、その時点で既婚で子供が居たにも関わらず領民の娘である母を見初めて、それで私が生まれたんですよ。貴族らしく生活費だけはちゃんと支払ってくれたので暮らしにこそ困りませんでしたが、何せ小さな村ですから…母も私もずっと肩身の狭い想いで…」
「はあ…まあ良くある話ですね。お察ししますよ…」
「わ…解ったような事を言わないでください!当事者にしか解らない苦労だってあるんですよ!」
「……」
「ちょっと!聞いてるんですか!?」
「…いや、あれ…」
アレスは目を見開いて前方を見つめたまま指差した。
「あれは…!?」
少女も驚く。

道の向こう…すなわち戦場の方からこちらへ向かってゾロゾロと歩いてくる一団があったのだ。
「ま…まさか敵…!?」
慌てて身構える少女。集団に向けて魔導弾を撃とうとしている。それに気付いたアレスは慌てて止めた。
「待ってください!味方ですよ!味方!」
それは確かにメインランド王国軍の軍服に身を包んだ人間の兵士達だった。ざっと400〜500人といった所だろうか…。だがその足取りは誰も皆フラフラとおぼつかなく力無い。まるで幽鬼の集団だ。
(まさか敵の魔術で操られたゾンビ軍団とかじゃあるまいな…?)
アレスも少し不安になり、背負っていた小銃を手に取り、いつでも撃てるようにしておく。

だが近付いてみると、それはやはり生きた人間だった。メインランドの青い軍服に混じって二割ほど緑色の軍服の兵士達がいる。
彼らは同盟国であるエルヴァン帝国…すなわちエルフの兵士達である。

エルヴァン帝国は“帝国”の国号を冠してはいるものの、実際は“連邦”だ。
皇帝と皇帝に忠誠を誓う貴族(地方領主)の連合である。
エルフによる統一国家は近代に至るまで無かった。
というか森に住み部族単位で狩猟採集の生活を送っていたエルフに国家など必要が無かった。
人間の国々が産業革命を経て近代化に成功し、他の種族を脅かし始めたため、それに対抗するために統一国家を作ったと言っても過言ではない。
それが証拠に百以上あったエルフ諸部族が数々の戦いを経て現皇家の名の下に統一されると、急速な勢いで近代化が実施された。
元来自尊心の高かったエルフがプライドを捨て“人間に学べる物は何でも学べ”といった勢いで、かつて彼らが畏怖と崇拝の対象としていた森林をバッタバッタと切り倒して殖産興業、富国強兵に邁進し、人間の国々が300年かけて歩んで来た近代への道程をわずか30年という短期間で成し遂げ、今や世界三大強国に数えられるまでになったのであった。

「君達は…?」
この部隊の指揮官と思しき中佐がアレスと少女の姿を見て尋ねた。
「私達は第13連隊・第2中隊の者です!」
少女が答える。
「第2中隊?本隊は?まさか脱走兵じゃあるまいな?」
「いえ…第2中隊は我々2名を残して全滅しました…」
「何と…そうだったか…」
中佐は軍帽の鍔を摘んでクイッと軽く下げた。
「ところでこの部隊は?」
「我々も生き残りだよ。前線から退却して来たのだ。スールの街まで下がる」
その言葉に少女とアレスは半ば呆然とした。
前線にはメインランド・エルヴァン合わせて約20万の将兵が居たはずだ。
その生き残りがこの500人前後だけとは…。
「大敗北じゃないか…」
アレスは思わずつぶやいた。
言ってから慌てて口をつむいだが幸い少女にも中佐にも聞こえていなかったようだ。
少女は中佐に半ば訴えるように言う。
「あの!何か私達に出来る事はありませんか!?負傷者の治療でも何でもします!」
「…そうか?ならば君達に頼みたい事があるのだが…」

あぁ…何でこういう風に自分から困難を買って出ようとする人って居るんだろうなぁ…とアレスは内心で泣きたい思いだった。
距離を置いて見れば尊敬に値する人種だが、その人種と行動を共にする事となると話は別だ。
全く別だ。
アレスは考える。
(今この人『頼みたい事がある』って言ったよね?上官のクセに“命令”じゃなくて“頼み”…その言葉が意味する所は…つまり…)
つまり、これから言い渡される“頼み事”がとてつもなく困難である事を暗示している…ような気がしてならなかった。
しかして中佐は言った。
「…実はな、我々の撤退のために一部の将兵が前線に踏みとどまって敵を足止してくれているのだ。生還を期さぬ死の任務だ。彼らは事実上、人間とエルフの混成部隊だが、名目上はエルヴァン帝国陸軍歩兵第7連隊だ。…で、先ほど魔信(魔導通信)による連絡があり、それによると将校一名に連隊旗を持たせて後方に下がらせたので保護して欲しいと…隊旗だけでも味方の手によって無事に祖国に帰れたならば我々は安心して死ねると…」

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