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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 4

「あ…あなたに今の僕の気持ちが解りますか!?」
アレスは少女が上官である事をつい忘れて言い返した。まあ4つか5つ程も年下の娘では上官という実感が無いのも無理は無いが…。
「解ります!!私も…兄を、先の魔軍との戦いで亡くしていますから…」
少女は少し哀しげにうつむいて言った。
「え!?…そ…それは…その……すいません」
「謝っていただかなくとも結構です。兄は王国軍人として死力を尽くして戦って立派な最期を遂げたのです。兄は我が一族の誉れです。私も兄の後に続き、この命を王国のために捧げる覚悟で王立魔法学院を休学して軍に志願したのですから」
「はあ…自分から志願して来られたんですか…」
これはアレスからすると少し理解し難い感覚だった。彼は徴兵されたから軍人になって否も応も無く戦場に来たのだ。そこに自分の意志は無い。そりゃあ家族や故郷を守るためなら命を捨てても良いとは思うが、正直言って死ぬのは怖い。出来れば避けたい。だからわざわざ望んで死地に赴く少女の気が知れなかった。
どこの国でもそうだが、メインランド王国の軍隊も概ね士官は貴族出身者、下士官・兵士は平民出身者によって構成されている。恐らく彼女も貴族の娘なのだろう。
戦争になれば貴族階級は真っ先に戦場に出て、国家のために命を懸けて戦う。それが中世以来の彼らの伝統であり誇りであり、また彼らを支配者階級たらしめている理由なのである。
平民にはそんな義務は本来は無い。その代わりとしての非支配者階級なのだ。戦争は本来、貴族達だけの物であったはずだ。
だが近代という時代はそれを許さない。否も応も無く全ての人を巻き込んでしまうのが近代なのだ。

そしてそういった背景思想の違いは端的に発言にも顕れるもので…。
アレスは先程とは違って恐る恐る少女に進言した。
「あの…当初の命令通り前線を目指すという魔導師殿のお考えは非常にご立派とは思うんですが、とりあえずここは連隊司令部のあるスールの街まで下がりませんか…?」
「あなたは何を言っているのですか?まさか臆病風に吹かれたのではありませんよね?」
「め…滅相も無い!…ただ我々たった二人が進もうが退こうが大勢には些かの影響も無いと思われますので…ここは…」
「今は私が中隊指揮官ですよ!?前進あるのみです!」
「わ…解りました…」
だが、やはり後退しておくべきだったのだという事が判明するのは、それから間も無くの事だったのだ…。


二人は前線を目指し、ひたすらに歩き続けた。
少女はアレスの4〜5歩ほど前を歩いている。
やがて日が西に沈み初め、辺りは次第に闇に包まれ始めた。
一応街道だが、田舎道ゆえ街灯など一切無い。
綺麗に舗装され整備されている道の方が珍しいのだ。
日が完全に落ちると、辺りは本当に真っ暗闇になってしまった。
明かりと言えば夜空に輝く月と星々…それともう一つ…二人が向かう先に広がる山々…その向こう側の上空だけは不気味な程に赤々とした光に包まれていた。
更に、ドーン…ドーン…という遠い砲撃音がひっきりなしに聞こえて来る。
(たぶん山の向こう側は相当な激戦なんだろうなぁ……あぁ…行きたくねぇ…)
アレスがそんな事を考えながら歩いていると、少女がギュッと腕に抱き付いて来た。
少しドキッとして見てみると小さくカタカタと震えている。
「…怖いんですか?」
アレスは思わず少女に尋ねた。質問を口にしてから後悔した。
『“怖いか?”ですって!?何を言うのですか!?私は国に命を捧げる覚悟です!“怖い”だなどと思うはずがありません!だいたいアナタは…!』
…というような答えが帰って来ると思われたからだ。だが、少女の口から出たのは予想外の言葉だった。
「…怖いです」
「え…?」
「怖いですよ。本当は私だってアナタと同じ…正直あっち(戦場)には行きたくないです…」
「だったら…」
「でもダメなんです!」
少女はいきなり叫んだ。
「私は戦場に行かないといけないんです!戦場で功績を挙げて勲章を貰って故郷に帰らないといけないんです!そうしないと認めて貰えないんです!!」
一気にまくし立てる少女。その表情からは使命感よりも、どことなく悲痛さが感じられ、アレスは失礼と思いながらも訊かずにはいられなかった。
「認めて貰うって…一体どういう事ですか…?」
「……」
少女は黙っていたが、やがて話し始めた。

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