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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 16

アレスとバリィが交わす声はエリーゼに気取られぬ小声だ。

彼女は涙を堪えていた。

新兵ながら幾らか世間の厳しさを知っているソフィとレンチェフは、軍隊という組織を幾らか理解した。
二人は戸惑いつつ不動の姿勢でそれに応えるしか出来なかった。
ソフィの年下でレンチェフと同い年、そんな少女が腕づくでも指揮官という重責を全うしなければならないと察していた。
そして少々早く軍に入ったバリィは、この臨時編成にキナ臭さを感じていた。

それでもやらねばならない。

「ウチには勇者サマもいるからな、何とかなるだろ?」
「ちょ!止めて下さいよバリィ上等兵!」
「そういう訳でビシバシ行くから二人供、戦う前からヘコたれない様に!」

悪ガキ仲間の様にじゃれつくアレスとバリィを横目、エリーゼは新兵二人を見据えた。

「「了解!」」

今度こそ新兵二人は小隊付支援魔導師、兼小隊長(代行)の意に応えられる、敬礼動作を行った。

「貴方達には主に荷物持ちや小間使いを任せるけど、共通語の読み書きと多少の算術は出来て?」

共通語でなくとも比較的ポピュラーな東西言語で、文字通り自分の名前が書ければ軍隊に入れる、文盲率の高い時代である。
特に辺境部落民族の出身の兵士ならば、常に同期のバディを通訳に付ければ良いとされていた程だ。

「・・・。」
「私は実家で出荷の方も手伝ってましたし、レンチェフ君も工作機械や作業伝票の扱いだとかで、そういうのは問題ないそうです。」
民族、というよりも彼の個性を理解した上でソフィはレンチェフを通訳した。

エリーゼはフムフムとうなづき、新兵ふたりを引き連れ中隊本部に向かう。

「あなた達も道草食ってないで、とっとと行きなさい。」
「「了解!」」

アレスとバリィは丁度反対方向の補給所に向かい、一同は二手に分かれる。

アレスがチラリとエリーゼの方を振り向くと、彼女は早速とばかり新兵ふたりを『アンタ達デキてるでしょ』などとからかっていた。
ソフィが『はわはわ』と可愛らしく解りやすく取り乱す。
レンチェフは相変わらず無言ながら、不健康な青白い肌を耳まで真っ赤に染めて、頭から湯気を立てていた。

ついさっきまでの慣れないスパルタぶりはどこへやら牧歌的な風景である。

「ほら行くぞ!あんまし待たすと補給係が臍曲げるぜ?」
「ええ〜!そんなぁ〜?」
「走れ走れ勇者!」
「それやめて〜!」

アレスはバリィの背中を追いながら、ああこの人アイツに似てるんだ、誰だっけ?というデジャブを感じていた。

カール

かつてつい昨日までアレスのすぐ側にいた戦友、トラウマが彼の名を思い出させない。

…ごめん…誰だっけ…まぁいいや…

ー補給拠ー

そこは軍がスールで民間の流通倉庫を借り切った一角であった。

「あぁあ〜ん?知らねぇなぁ〜!」

アレスの頭上から熊の様な大男が欠伸混じりの大声で、どことなしわざとらしく吠えていた。
縦にも横にも大きい熊男の分厚い胸元、ネームプレートにはマモン伍長とあった。
しかし矢鱈と毛むくじゃらで独特の脂臭い体臭。
最初は獣人族の類かと思ったが、軍服や記章で確認した限りどうやら服の中に収まっているのは人間らしい。

多忙でなければ少々の昼寝昼さえ許される微妙な時間帯だが、エリーゼの手配した時間や書類にも間違いはない。

更にマモンのすぐ後ろには輸送隊の焼印が捺印された木箱、そして小銃らしき細長い油紙包み。
しかもご丁寧にアレス・ジャスティス二等兵の名が入った受け渡し伝票が添えられているのだ。
これはもうマモンの意図的を通り越し、意地悪なサボタージュに他ならない。

「なぁ噂の勇者ちゃんよぅ?わかるよな?俺に仕事を思い出させてくれる方法?」

早い話が賄賂の要求、後方部隊では時折こうした小さな不正が横行する。

マモンの髭面が顎で示す先、元が民間の倉庫だけあって色褪せた数々の宣伝ポスターが貼られていた。
そうした中で馬具屋の鞍・蹄鉄お手入れ『銀貨十二枚より』という部分だけが、赤インクの丸印で強調されていた。

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