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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 17

しかも『より』という辺りからして、この熊公はそれ以上にガメルつもりだろう。
マモンの太鼓持ちらしく脇に構えていた、ヒョロ長いチンピラ一等兵が粘っこく下卑た笑いを浮かべていた。

アレスが初めて知る軍の裏側で面食らっている様子を、壁にもたれたバリィはどうとするでもなく見守っていた。

「どうする勇者ちゃんよぅ?」
「マモン伍長どの、自分は軍の命令で正規に、装備の受領に参りました。」
「金がねぇならケツで払ってくれても…」
「「ふざけるなっ!」」

とうとう堪忍袋の緒が切れたアレスは、マモンの顎に拳を叩き込まんと叫んでいた…いや拳と共に放たれた叫びは同時にもう一人分あった。

バリィである、そして彼の当て身はアレスの拳よりも、速い。

マモンが壁に叩きつけられ、色褪せたポスターを鼻血で染め上げた。

マモンは魔を祓う戦女神の歌を聞きながら、その鉄槌で昇天する妖魔が如くアヘ顔で鼻血をまき散らす。
にも関わらずバリィの追い打ちは止まらず、マモンをうつ伏せに押さえ込み、首をロックして上腕で数秒締め上げ、眠らせた。

「アレス二等兵、暴力はいかんぞ?」
「あっ…はい…。」

嵐が収まった。

アレスはポカンと脱力しながら、返り血の一滴も浴びていないバリィに感嘆しながら、空振り大振りのテレホンパンチを下ろす。

「ザッケンナオラー!スッゾコラー!コノドグサレッガー!」

いや暴力の嵐まだ収まらず、先程まで風の下級精霊が如く静かな空気と化していた、チンピラ一等兵が暴力的な辺境俗語をまき散らす。
大声を張り上げて混乱と恐怖を取り除いたのだろう、彼は銀幕の英雄にでも酔ったかの様な瞳を輝かせ右手を腰に回す。

拳銃

それなりの早さで抜き出されたそいつは僅かな赤錆を交えた青黒い鋼の輝きで倉庫全体を威圧する。
人間から殺意をもって、それも友軍から向けられた武器、アレスは凍り付いた。

チンピラ兵はヒラヒラとアレスにバリィに銃口を踊らせ、癪に障る芝居口調で彼らを諭し始めた。

「いいか撃たせるなよ?俺にお前達の様な屑野郎共を撃たせないでくれよ?いくら正当防衛で…。」

どぅんっ!

銃声、ただしその銃声はチンピラ兵が映画の早撃ちヒーロー気取りで振りかざす、官給拳銃が叩き出した物ではない。
彼の右耳をかすめた二十番ゲージの鳥撃ち散弾が壁面に無数の小さな風穴を開けくすぶっていた。

「聞こえねぇ、ちゃんと喋れ。」

容赦ない見栄を切るバリィの手には『野盗狩り』の異名を持つ二連発の散弾銃、いや散弾拳銃。

通り名が示す通り、野盗がブッ放す切り詰め猟銃に対抗して警備用に生産されたソウドオフショットガン。
木製の先台握り部分には砲兵隊の焼印、元は砲弾輸送の馬車やトラクターの自衛用だろう。
チンピラ兵が口上を流す間、バリィはゆっくりと雑嚢(腰袋)から無造作に引っこ抜いて発砲した、ただそれだけであった。

チンピラ兵の耳元で鳥撃ち散弾が壁面に無数の小さな風穴を開けながら、いまだチリチリとくすぶる煙を立てている。

「二発目はスラッグ弾、水晶境どころか呪われた孤島まで、お前の金玉をブッ飛ばせる。」
「なめんなゴルァ?こいつの引き金は以外と軽…。」
「ニロクシキのダブルアクション、ドワーフの戦斧を指先で持ち上げるぐらいには『軽い』引き金だろうがてめぇの細腕だと、どうだ?」
「抜かしやがれ!」

軽騎兵がサーベルを交える最中で軽快かつ軽便に牽制をかけるには好評とされた軽量級リボルバー。
チンピラ兵の手にあるそれは雑多な官給拳銃の中でも、こうして面と向かった一発勝負には向かない代物であった。

まるで芝居小屋の冒険活劇、しかしアレスの前で演じられているのは、本当に『人間同士』で命のやり取りであった。
どう見てもチンピラ兵は三文役者、バリィの一撃で彼は死ぬだろう、彼が降参しない限りバリィは撃つだろう、人間だろうが友軍だろうが撃つだろう。

人と人が銃口を向け合う以上、そこに慈悲はない。

「「やめろ!」」

アレスは叫ぶ、そしてその叫びは再び、他の誰かと重なった。
しわがれて重苦しい、年輪を重ねた低い怒声。

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