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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 15

目障りなおっぱいと辛気くさいガキだが、幾らか大人の意識を心得ているのが救いだ。

ひょんなことからエリーゼは十八人の命を預かる大役、ため息を飲み込みながら士官としての自覚を取り戻した。

「さて、そろそろブランチの時間はお開きにします。」

エリーゼなりに指揮官らしい態度に転じ毅然とした表情で、グラスの白ワインを優雅に飲み干す。
バリィは焦るでもなく自然な仕草で、三本ほど残った串焼をまとめてモリモリと咀嚼するなりビールで流し込む。
アレスもまた、気付けの迎え酒にショットグラスの安ブランデーを一気に煽り、両頬を叩いて気合いを取り戻す。
(注:軍務中でも多少の昼酒が認められている時代である)

その差はあれど三者三様の実戦経験者が杯を下ろした時、先程までのムードに流されかけた新兵二人が、感嘆し息を飲む。

会計を済ませ席を立つなり、エリーゼは間髪入れず、指揮官として命令下達を始める。

「先程話した通りアレス二等兵はバリィ上等兵の案内で補給部に出頭して、個人装備の受領。」
「「了解!」」

示し合わせたかの様な返答。
アレスは彼女との肉体関係を含めた煮え切らない部分の公私を割り切り、基礎通りの敬礼動作を取る。
バリィは表情こそ遊び人の兄ちゃんのままだったが、その敬礼動作は締めるべき所は締める、形を守ったそれである。

「私は中隊本部に向かいます…ソフィ二等兵とレンチェフ二等兵は私の掌握下に入りなさい。」
「りょ…了解…です?」
「…了解…。」

しどろもどろな新兵ふたり、こうした場面でどうなるかアレスの記憶にはまだ新しい。
バリィはこうした状況の対処に長けていたが、最初が肝心と考えあえて流れに任せる。

エリーゼが新兵二名の階級姓名を呼んだ後「気をつけ!」と号令をかけた。
他の客は何だろうと怪訝な表情や好奇心をそちらに向ける。
ただし客でも他部隊の兵士は老若男女階級を問わず、見慣れた光景だと気にした風も見せない。

まずソフィの頬に平手が飛び軽快な打撃音、ついで柔らかい重量物が床に転倒する音が響いた。

「貴様は牛か?それとも豚か?人間なら二本足で立って姿勢を正せ!人間様並の声で返事をしろ!」
「了解っ!」

まだ些かの怯えを見せながら、ソフィが立ち直り返答する。
壊滅したアレスの中隊にも数える程度には女性兵士がおり、こうした状況での差別は全くない。
ただその光景に、レンチェフの能面顔が少々歪んでいた。
その露骨に反抗的な表情にエリーゼは毅然と睨み返す。

威嚇の様にエリーゼが左の平手をひらめかせソフィの時以上に大きく振りかぶる。
次いでレンチェフの頬にもビンタが打ち込まれる…かに見えた。
ビンタを外れさせて恥のひとつもかかせてやろうというのか、レンチェフが平手の軌道をギリギリで避ける挙動を見せた。

バリィは彼に多少の武道か喧嘩の心得があると察しながら、でもここは素直に受けておけよと思った。
アレスはアレを狙われるんじゃないか、と身体の一部を縮こまらせながら予測した。

そしてレンチェフの眠たげだった瞳が驚愕に開かれる、そこにあるのは無駄に空を切った筈の平手。
さながら手品やイカサマの左手芸がごとく目隠しのフェイント、単純だが使い方しだいで有効な技であった。

秒単位以下の出来事で狙われた本命は、大体アレスの予想通りであった。

容赦なき金的狙い、ただし蹴りではなく掌握、であった。
エリーゼの右手はレンチェフのズボンと下着ごし的確に、彼の陰嚢を捕らえていた。
今は脅しのレベルだが確実に潰す意図が含まれた攻撃である。

「どこの何様か姓名階級を名乗れ!」
「…レン…チェフ…ジオニコフ…二…等兵…。」
「声が小さいぞ!オカマにでも転職するか!包茎野郎!」
「レンチェフ…ジオニコフ…二等兵…。」
「聞こえんな!やっぱり潰そう!オペラ歌手みたいに良く通った声になるかもな!」
「自分は!レンチェフ!ジオニコフ!二等兵!です!」
「よし!」

暴君が如き振る舞い、エリーゼもまた魔法学院から軍に移籍してから、何度も見てきた世界。

「アレス、あの少尉ドノ、守ってやろうな?わかるよな?」
「はい、あの人は色々と軍に向いてない、無理してる。」

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