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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 14

防御陣地と言っても塹壕を掘って土嚢を積んだだけの簡単な設備しか無い。
将校が軍刀を振りかざして兵達を鼓舞した。
「怯むなぁ!!あんなのはただのデカいトカゲだ!!榴弾砲、撃てぇー!!!」

ズドォーンッ!!!!
ズドォーンッ!!!!
ズドォーンッ!!!!

砲兵隊が大砲の一斉射撃を加える。
巨大竜の周辺一帯が激しい爆炎と煙に包まれた。
「やったか…!?」
ところが…
「…グオオオォォォォォォッ!!!!」

「…だ、駄目です!!体表面の一部が焼け焦げたようですが殆ど無傷です!!」
「な、何だとぉ…!?榴弾の直撃を喰らっても平気だなんて…!!」
その時、竜が口を開いた。
「「「……っ!!!?」」」
皆は戦評した。次の瞬間…

ゴオオオォォォォォォ…ッ!!!!

「ぎゃああぁぁぁ…っ!!!!」
「ぐおおぉぉぉ〜っ!!!?」
竜の口から火炎が噴き出し、並んだ大砲を防御陣地ごと焼き払った。
もちろんそこにいた人間もろともである。
哀れ兵士達は一瞬にして消し炭と化した。

防衛線を構成する一部隊が突如として現れた竜のために一瞬にして壊滅状態に追いやられた事実はすぐさまスールの総司令部に報告された。
そして当然スール駐留の各部隊にも、何かしらの命令下達がなされていた。
あくまで『ドラゴン』という魔界のビッグネームは伏せられ、大型モンスターの出没が確認された事への対応という範囲で…。

「…という訳だそうだ、朝帰りしてきたアレス・ジャスティス二等兵。」

朝飯には遅く昼飯にはまだ早い大衆食堂、シニカルな物言いをしてくる上等兵。
先日までは兵舎の当直勤務で、アレスを案内してくれた年上の兵士である。
平時なら貧乏クジ以外の何物でもないが、戦時では多少?の小間使いさえ我慢すれば、天国とも呼べる当直勤務。
今朝まではそうであったバリィ・ヘリントン上等兵、軍人には見えない遊び人風の陽気な若衆。
臨時編成でアレスとエリーゼと同じ小隊に加わった。

軍隊において帰隊遅延(門限破り)の類は立派に懲罰対象な訳だが流石のバリィ兄さん。
当直交代のドサクサで上手い事ごまかしてくれた様である。
彼はそれを怒るでもなく恩に着せるでもなく、からかい甲斐のある弟分が出来たと満足している様だ。

彼は鶏肉切り身の串焼きをモリモリと麦酒で流し込みつつ、アレスをからかっていた。

「先日の行軍で破棄した装備は、その人の案内で受領に行ってね、朝帰りしてきたアレス・ジャスティス二等兵。」

こちらは不機嫌そのものなエリーゼ・フレデリック少尉。
彼女は本来なら小隊付魔導師だが、士官不足の都合から兼業で小隊長代行、という任まで押しつけられた。
小隊長が来る筈もない小隊での小隊長代行、エリーゼにとってはありがたくない繰り上げ小隊長であった。

他にもエリーゼ・フレデリック少尉ご機嫌ななめの理由は、数え挙げたらキリがない。
正規の小隊長が一名欠員で十九名、厳密にはギリギリで小隊の頭数にすら足りていないのだ。

そしてこの臨時編成で実戦経験者といえば、昼飯前から焼鳥ビールしているバリィ上等兵のみだ。

他は臨時募兵に促成訓練を施された若年兵ばかりで、その中で比較的年長の二名がこのテーブルを共にしていた。

ソフィ・ミヅシマ二等兵…農家出身の十八歳で丸顔にメガネをかけた、小太りな少女。
良心的に解釈すれば母性的な体格、人柄もまた謙虚かつ温厚そのものなのだが…。
彼女のバストは『少々』豊満であり…柑橘類に例えるならば、それはエリーゼの末成りレモンに対して程良く熟したグレープフルーツ大であった。

それとレンチェフ・ジオニコフ二等兵…工業地区出身の十七歳で、無口で眠たげな表情をした、小柄な少年。
差別する気こそないが貧民層特有の陰鬱さは、エリーゼの苦手とする雰囲気であった。

エリーゼはバリィと共に(アレスが不在の間)新兵達との面通しを済ませていた訳だが、この二人は十二分に若年兵のまとめ役として機能していた。
二人とも苦労人の部類、戦火に焼け出され募兵に応じざるを得ない少年少女の典型にして代表格。
彼らもまたエリーゼと方向性は違えど、戦場で何かを成さねばならない身分なのだ。

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