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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 12

「い…良いんですか!? 僕、ここ、使っちゃって…!」
「良いんだよ。君はそれだけの働きをしたって事だ。胸を張って使いなさい」
上等兵は笑って言った。
その後にボソッと呟くように付け加える。
「…それに、これからが大変だと思うし…」
「…へ? 今何か言いました?」
「…いや、ただの独り言だ。気にしないでくれ…」
「はあ…?」
その真意をアレスは間も無く身を持って思い知る事となるのであった…。


翌日、連合軍が司令部として使っている城館(やはり中世の頃に建てられた物)にて授与式が執り行われた。
その会場…
「…メインランド王国陸軍、歩兵第13連隊、エリーゼ・フレデリック少尉、並びにアレス・ジャスティス二等兵、前へ…」
「「はっ!!」」
それぞれ名を呼ばれたエリーゼとアレスは将軍の前に歩み出る。
両脇には正装した儀仗兵が整列している。
列席した高級将校達に混じって二人が助けたエルフの少佐…ディートリンデ公女の姿もあった。
会場には彼女の持ち帰った隊旗も掲げられている。
厳かな雰囲気の中で式典は執り行われていた。
「よくやった」
「あ…有り難き幸せ!」
下っ端の兵隊にとっては正に“雲の上の人”である将軍に勲章を胸に付けてもらい、アレスは身も引き締まる思いだった。
改めて自分達の成し遂げた事の大きさを実感する。
一方で“とんでもない事をしてしまった”という思いも増していく…。
彼が公女様に対して行った“治療”である。
(まさかエルフの皇帝陛下の姪だったなんて知らなかったもんなぁ…まぁ今にして思えば知らなくて良かったか…もし知ってたら、とてもじゃないが勃たなかっただろうからな…)
ちなみに“アレ”に関しては、あの場に居た四人だけの秘密である。
そんな事を考えながら公女の方を眺めているとキッと睨まれ、慌てて目を逸らした。
あの場に居た四人と言えば、一つ気になっている事がアレスにはあった。
(シュルツェン軍曹は…?)
そう、共に公女を助けて隊旗を持ち帰ったダークエルフのリタニア・シュルツェン軍曹…彼女の姿が何故か会場に無いのだった。

だが、その疑問を誰かに尋ねる間も無く、祝賀会と称したパーティーが始まった。
二人はたちまち列席者達(ほとんど軍人)に取り囲まれ、やれ現代の勇者だ英雄だと持て囃された。
悪い気はしないが自分より遥かに位が上の連中相手に気を使って、精神的にヘトヘトに疲れ果てた。
宿舎に戻って休もうと会場を出ると、物凄い勢いで集団に包囲された。
「キャッ!?」
「な…何ですか!? あなた方!」
「メインタイムス紙です!フレデリック少尉とジャスティス二等兵ですね!是非お話を!」
「アルヴプレス紙です!一言!」
彼らは従軍記者…戦況をタイムリーに銃後の国民に知らせるため、軍と行動を共にしている報道関係者だ。
殆どはペンとメモ帳を持った新聞記者だが、中には顔に向かってマイクを突き付けて来る者やカメラを回している者も居た。
この世界ではまだ登場したばかりの新しいメディア…ラジオの記者である。
カメラはニュース映画用…まだ家庭用テレビなど夢の話…ニュースは映画館で放映された。
ちなみにメインランドは基本的に自由報道だが、エルヴァン帝国では全てのメディアに軍の検閲が入るらしい。
報道事情は国によって異なるのだ。

二人は小一時間ほど質問責めにされ、ようやく解放された。
「はぁ〜…ほんっと疲れましたねぇ…」
「なんか私達、知らない内に英雄視されちゃってるみたいですね…」


それから数日後…スールの連合軍司令部の会議室に、各国の将軍達が顔を揃えていた。
「…何だと!?」
「それは本当なのかね!?」
「うむ、我が軍の斥候からの報告によると、どうも魔族側が大規模な攻勢を計画している可能性がある」
「目標は!?」
「そんなの、このスールの街に決まっているだろう!」
将軍達は動揺した。
戦場が数十〜百キロ以上も離れた遠い地ならば何という事も無いが、自分達の今いる街が攻められるとなれば話は別なのである。
「落ち着きたまえ諸君!!」
それを一喝したのは、メインランド王国陸軍、ピエール・ヴン大将であった。
「何も心配する事など無い!!魔族の軍勢がどれほど強かろうが、我が…」
「その通りじゃあぁっ!!!!ワシらの気合いで魔軍など一ひねりじゃわい!!!!ウオオオォォォォォォ…ッ!!!!」
ヴン大将の言葉を遮って立ち上がって叫びだした毛むくじゃらの大男…ヴィスト連邦のノヴゴルド元帥である。
ヴィスト連邦は大陸南部に位置する獣人達による国家で、諸部族の首長達による合議制で統治されていた。
「ノ…ノヴゴルド元帥!!話の腰を折らないでいただきたい!!」
「気合いじゃあぁっ!!!!気合いじゃあぁぁっ!!!!ウオオオォォォォォォー―――ッ!!!!」
「……」
「…まあ元帥はああいうお方だから、放っておいて我々は話を続けよう…」
エルヴァン帝国のユグドラス大将が溜め息混じりに皆を促す。
「…で、ヴン大将、何か策があるのかね?」
「うむ、我がメインランド王国陸軍でも最強にして最新鋭の装備を誇る第2師団をこちらの戦線に回してもらえる事になった。これで戦局は一気に好転するだろう!」
「最新装備!?」
「何だね、それは?」
「フッ…それは軍事機密につき申し上げられぬ…」
不敵に微笑むヴン大将に他国の将軍達は訝しげな視線を向ける。
(ま〜たメインランドお得意の秘密主義か…)
(わざと情報を小出しにして作戦の主導権を握ろうという腹だな…)
数ヶ国から成る連合軍ともなると、このように将軍クラスの者達は政治的な駆け引きも視野に入れた言動をするようになるのである。
しかし、これから圧倒的に優勢な敵との決戦に臨もうという時に、ちゃんと全軍で情報共有しておかなくて大丈夫なのだろうか…?

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