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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜
官能リレー小説 - ファンタジー系

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蘇る魔神たち〜近代の戦い〜 11


エルフの少佐もエリーゼに手伝って貰いながら身体を拭いて服を着る。
エリーゼも血の事には気付いているはずだが、あえて触れなかった。
ただ、こうは言った。
「そこの兵は勇者の血族でして…少佐殿の意識が戻らなかったため“緊急治療”を施させていただきました。どうかお許しください」
「…いや、構わぬ。やらなければ私は今ごろアルフヘイムへと召され祖先の霊と邂逅していた事であろう。貴官の判断に感謝する。そこの兵も…礼を言うぞ。それと、殴って済まなかったな」
「い…いえ!と…とんでもないです!もったいないお言葉であります!」
アレスは慌てて直立して敬礼する。

ここでずっと黙っていたリタニアが口を開いた。
「フレデリック少尉殿、少佐殿に隊旗の確認をした方が…」
「あ!そうだったわね…少佐殿、連隊旗を預かって来たと聞いているのですが…」
「ああ、それならここにある。肌身離さず持っているぞ」
…と、少佐は言いながら上着のポケットの中からボロボロに裂けてほぼ枠の房飾りだけになった連隊旗を取り出して見せた。
激戦を思わせる品にエリーゼとアレスは思わず息を呑む。
「隊旗もあった…では皆さん、行きましょうか」
そう言うとリタニアは背嚢を背負い、小銃を担いで、当たり前のようにスタスタと歩き始めた。
「ちょ…ちょっと!シュルツェン軍曹!」
「…どうしました?少尉殿」
「いや、どうしました?ってアナタねぇ!少佐殿はまだ体力が完全に回復していないんですよ!?せめて夜が明けるまで休息を…」
「…お言葉ですが少尉殿、そんな事をしていて敵に追い付かれたらどうするんですか?」
「そ…それは…」
「…私なら大丈夫だ…心配いらん…」
少佐はそう言うがまだ顔色が良くない。
無理をしているのが判る。
エリーゼはアレスに言った。
「ジャスティス二等兵!少佐殿を負ぶって差し上げなさい!」
「えぇ!!?無理ですよぉ!僕だって自分の装備一式背負ってるんで…」
「そんなの捨てて行きなさい!どうせ官給品でしょう!?少佐殿の命とどっちが大切なんですか!?」
「わ…解りました!!…では少佐殿、自分の背中に…」
「…済まんな。恩に着るぞ…」
少佐はアレスに負ぶさった。
(…あ、おっぱい当たってる…柔らかいなぁ…)


スール市…元は人口5万人前後の田舎町であったが、今やこの町が魔族の侵攻に対抗すべく人間(および亜人種)諸国連合軍の最前線の砦となっていた。
郊外の野営地には10万を超える大軍が駐留し、市街地には彼らを相手に商売する酒保商人(娯楽や日用の品などを扱う)や娼婦達が各地から集まり、町は(おそらく始まって以来の)にわか景気に湧いていた。
市街中心部は中世の頃に作られたという城壁に囲まれており、連合軍司令部はそこに置かれている…。

「や…やっと着いたぁ…」
「敵に遭遇しなかったのは幸運でしたね…」
ようやく城門の前まで辿り着いた四人は安堵の溜め息を吐いた。
中に入ろうとすると門衛の兵士達が着剣した小銃で行く手を遮って言う。
「お待ちください!司令部に何のご用ですか!?許可は!?」
「失礼な!!私達は…!」
エリーゼが手短に事情を説明した。
兵士達の顔色が見る間に変わっていく…。
「し…失礼いたしましたぁ!!どうぞ!お通りください!!」

その後はもう下へも置かない対応ぶりだった。
案内され上等な部屋に通される。
やがてノックの音がし、メインランドとエルヴァンの将軍ほか数人が姿を現した。
高級将校らしく金モール付きの上等な軍服…アレス達のとは基本デザインは同じでも明らかに質が違う。
参謀を示す飾緒を下げている者もいる。
恐らく連合軍の中枢を担う高級将校達だろう。
四人はバッと直立不動の姿勢を取り敬礼する。
ちなみにエルヴァン軍の将軍達は二十代初めか半ば程にしか見えないが、これでも実年齢は500歳とか600歳とか言うのだろう。
…などと思っていたら、エルヴァンの将軍達が揃って女少佐の前に片膝を付いて頭を下げた。
まるで臣下が主君に対する姿勢で…。
「殿下、よくぞご無事で…!」
「…将軍閣下、その呼び方はお止めください。今の私は一人の陸軍少佐に過ぎません」
「「……?」」
訳が解らないという顔のアレスとエリーゼにメインランドの将軍が言った。
「…君達には知らされていなかったろうが、君達が助けたこちらの女性は、ディートリンデ・フォン・ヴィーレフェルト・ド・アールヴヘイム公女殿下…エルヴァン帝国皇帝陛下の姪で皇位継承権を持つ皇族でいらっしゃる」
「「…ぅええぇぇぇっ!!!?」」
アレスとエリーゼは飛び上がらんばかりに驚いた。
一人、リタニアだけが平然としている。
アレスは彼女に尋ねた。
「し…知ってたんですか…?」
「いや?…ただ、最初にお顔を拝見した時、公女殿下に似ているなぁ…と思って、もしかしたら…とは思っていたがな」
「「……」」
その可能性を承知で銃を向けたのか…と、アレスとエリーゼは絶句する。
エルヴァン帝国の将軍は二人に向き直って言った。
「エリーゼ・フレデリック少尉、並びにアレス・ジャスティス二等兵、我がエルヴァン帝国は諸君らの働きに感謝し、勲一等聖騎士大綬章を授与する事に決めた」
「「あ…有り難き幸せ!!」」
続いてメインランドの将軍が言う。
「…近日中に授与式兼祝賀会を執り行う。詳細は決まり次第、追って連絡する。ご苦労だったな。宿舎に部屋を用意した。今日はもう戻って休んで良いぞ」
「「はっ!!」」

その後、二人はそれぞれ将校用と兵卒用の宿舎へと案内された。
「ここが君の部屋だ」
「こ…個室じゃないですか!?」
アレスは驚いて思わず案内してくれた上等兵に訊き返した。
兵卒の寝起きする兵舎と言えば、大部屋にベッドが所狭しと並ぶプライバシー皆無の空間が普通だからだ。

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