女子高に入学して 5
僕たち三人は靴を脱いで下駄箱に仕舞って、寮の玄関を上がり、奥へと進む。
適度に雑然としているような雰囲気もあり、あまり緊張しないが、たまに下着が干してあるのは顔を背けてしまう。
そしてリビングに入り、さっきの話で寮母さんがパチンコで稼いだといういくつかの立派な家電を見た。
「ここがお風呂ね」
玲奈がそう言って扉を開ける。僕はどきりとした。
幸いというかあいにくというか、誰も入っていなかった。
「お帰りなさい」
後ろから声がして、僕は振り返った。
この人が、寮母さん?
「母」というには、若いように見える。
「いさみ君ね」
「えっ?」
「お姉さんから聞いてるわ。もし先生と喧嘩したらここに泊まってね」
寮母さんは僕を知っていた。姉さんが手を回していてくれたらしい。
「姉さんが?男は嫌いなんじゃ…」
「ゴツくてムサいのが嫌なだけ。旦那を思い出すから」
「離婚したんですか」
「フリーになったからこんな仕事ができるの。部屋に来て。お茶でも出すから」
僕は寮母さんに彼女のプライベートルームに招かれる。
女子校の男子という微妙な立場なので、味方は多く作っておくべきなのでついていく。
「じゃあ、私たちはここで。なんかあったら、これで」
僕は、愛理と玲奈と、スマホのメッセージアプリのIDを交換した。
それとともに彼女らは部屋に帰り、僕は一人で寮母さんの部屋に入った。
「あの、なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「飯島裕子よ、斉藤よりいいでしょ」
「裕子さん」
「君みたいな子は大歓迎よ。順応性も高そうだし」
急に裕子さんが側に来てスカートに触れてくる。
「ママやお姉さんの気持ち、分かるわ。君みたいなかわいい子が脳筋のホモ野郎に掘られるのは可愛そうだもんね」
「ええっ…掘られる、って?!」
裕子さんは僕の頬を軽く撫でた。
「外の世界ではね、男をホモ化しようという勢力が、実はあるの。行く高校によっては、掘られる…とか、そういうことも十分あり得る。『同性セックス禁止』っていう校則、謎かもしれないけど、これは、君を護るおまじないのように効くはず。だから、三年間のこの学校での生活、全うするんだよ」