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K国首脳部の我が国に対する対決的な政策、我が国にとって仮想敵国に近くなってしまっているC国への接近、などにより、K国に好意的な人は我が国にはかなり少ない。
それだけに、まずいことを言ってしまったかと僕はびくっとした。
「いえ、できるってほどでも…」
「でも、ちょっとでもしゃべれる人がいてうれしいです」
うれしい、って??
「あの、失礼ですが、先祖がKから来たからK国籍をお持ちとか?」
「そういう訳じゃないんですけど、K流好きなんです。連絡先交換しませんか?」
僕はなんといっていいかわからないうちに連絡先交換することになってしまった。
下の名前もこのときはじめて知った。
ちょっと連絡先交換に手間取って、交換したころには、休み時間は終わっていた。
そして、今日も仕事が終わった。
スマホを見ると、みちよからメッセージが入っていた。
「温泉スパ、大学の友達の女子も一緒に行きたい、って言ってるんだけど、そういちろうくん、誰か男の友達誘える?」
明日なのに、急だな、とは思った。
でも、これは、半分ほっとした。
二人で出かけるなんて、なんか「デート」みたいで緊張したのだが、四人ならそういうこともない。
何より、男一人より(巻き込んで申し訳ないような気はするが)二人なら恥ずかしさも半減する。
僕は即座に返事した。
「うん、探してみる」
心当たりは、ある。
大学の同期で、僕と同じように女子に縁がなかった、かつ、同性愛には走らなかった。あいつ…
僕は、そいつにメッセージを送った。
「久しぶり。元気か?
急だけど、明日、女子大生と2対2で温泉スパに行く話があるんだけど、行く?」
返事は、比較的すぐ来た。
「行く」
彼は程なく「いまどこにいる?」と聞き、近くにいることを確認すると「飯でも食わないか?」とメッセージを出した。
今日は、ゆきさんにオナニーを撮影される約束だが、時間の約束まではしていないので、まあ、夕飯くらいならいいだろう。
そして、数十分後には僕は彼と向かい合って焼肉屋にいた。
「おお、そういちろう。久しぶりだな」
「まあ、一、二か月ぶりくらいかな、のぼる」
僕は、久しぶりに再開した大学の同期、のぼる と乾杯した。ただし、僕は慎重に、ウーロン茶にした。
「最近どうしてる?そもそも、今どこらへんに住んでるんだ?のぼる?」
のぼるは、来たカルビを網にのせながら、答えた。
「俺は……、のシェアに住んだ」
彼は、ターミナル駅から少しくだった、急行は確か止まらないはずの駅名を上げた。
「どうだ?シェア?」
「うーん…ちょっと、逃げ出したいことも、ある」
彼は、話をこう続けた。
そこは多分、平成時代には家族が住んでいたマンション一棟をまとめてシェアにしたところのようで、4LDKのユニットに一人一部屋住んで、そこのリビング、キッチン、ユニットバス、トイレを4人で共有する。
「今どき都内で個室があるのか」
「都心からちょっと離れたからな」
「で、何で逃げ出したいんだ?」
のぼるは、ビールを飲んだ。そろそろカルビが焼けてきたので、二人とも食べた。
「引っ越して、部屋に入ったら、早速シェアメイトの一人に会った。ブラウス一枚に、下はなにもつけてなくて。」