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みちよも、僕のことを種馬の一頭、みたいに思っているのだろうか…
さやかさんも、ゆきさんも…
僕はそういうことに気を取られて、会話を続けることができないでいるうちに休み時間が終わった。
そして、今日も仕事の時間が終わった。
なんか、さっきのようなことを考えると、ちょっと帰りづらくなるのだけど。
でも、ゆきさんとの昨日の約束「明日、また改めてきちんとセックスしよう」があるから、帰らないわけにはいかない。
僕は職場を出た。でもゆきさんとの約束にはまだ時間がある。
少し遠まわりをして帰ることにした。
契約した不動産屋がある、若者が集まる、にぎやかな駅前に出た。
都内を回る環状線、都内をつなぐ新旧の地下鉄、そして隣県やその先へとつなぐ電車、などが発着する大きな駅だ。
今日は4月にしては比較的暖かい日だった。みちよの言う、そして最新のファッション雑誌にも載っている「見せパン」の女子もちらほらと見られる。
“JK、JCと少子化対策!”のような出会い系の看板を横目に見ながら、僕は時間をつぶすべく、適当に歩いていった。
「お兄さん、キャバクラどうですか?今の時間なら安いですよ」
黒い服の男性が声をかけてきた。
普段なら、そんな声など無視するのだが“キャバクラ”の語に僕の足は止まった。
さやかさんが“キャバクラに勤めている”と聞いたが、実はキャバクラってどんなものなのか、夜の仕事、という以外分からないままだったのだ。
僕はその人の方を見て、こう訊いた。
「あの、よく分かっていないんですが、キャバクラ、ってどういうものなのでしょうか?」
その黒い服の男性はすかさず言った。
「はい、基本的には、女の子と一対一で飲むところです。1セットに2〜3人の女の子が交代していきます」
その人は声を落として続けた
「オプションの、VIPサービスについては、中で女の子に聞いてください」
その内容は、昨今の情勢から、ある程度想像できた。
「お兄さん、今なら、税・サービス料抜いて、この値段!」
「僕、まだ夕食食べてなくて…」
応答してしまったら引き込まれることは半分分かっていたが、さやかさんがやっている仕事ってどんな感じなんだろう、というのは興味ないわけではなかったので、半分流れに任せてしまった。
「では、フードもつけて、この価格!ピラフとかパスタとか、夕食になるものもありますよ」
その総額なら、バイト始めたばかりの僕でも、そんなに高く感じるものではなかった。
僕は、その客引きに乗ることにした。
店内に入った。
薄暗い店内は、がらんとしていた。
さっきとは別の黒い服の男性が水割りを作っていった。
それを飲みながら注文したピラフを待っていると女の子が来た。
「はじめまして。あい です」
舌っ足らずの甘えた声を見上げると、スレンダーではあるがやたらと胸が目立つ女の子が立っていた。
「お客さん若ぁ〜い。学生さん?」
そう言うと、あいというキャバ嬢は遠慮なく僕の横に座ってきた。
「あ、そんな若くは無いです。もう働いてますから。」
僕は自分より明らかに年下であろうあいに向かい、敬語になっている自分に情けなく思いながら、顔を赤らめた。
「緊張しないでぇ・・始めてなの?」
身を擦りよせて来るあいの手は、僕の膝の上に置かれた。