触手調教BEST!! 8
ジャンキー野郎が美月に手を出す前に、
彼女が通報してくれていれば、
美月にもチャンスはあった。
話題性が高くなると判断して、
もしかすると、
美月がホテルに連れ込まれるのを、
わざと止めずに見逃した可能性もある。
金にならないと判断すると、
容赦なく警察に売る女。
ジャンキー野郎には同情の余地はないが。
静をスキャンダルにさらすのは、
俺としてはおもしろくない。
「いくら払えば見逃してくれるんだ。
……ハイエナ」
彼女の笑顔が消えた。
ハイエナというあだ名で彼女を呼ぶ相手は、
裏事情に詳しい人間だけだからだ。
「あと、もう一つ、
ついでに情報を売ってくれ。
ハイエナ、うちの美月がやられた夜、
お前はジャンキー野郎を張り込んでたな」
「結城美月が奴を訴えたら、
私が通報することもなかったのに。
奴と結城美月がホテルにいるって、
私に教えてくれた娘がいるからね」
「ああ、知ってるよ。
他の事務所に移籍する気なんだろう。
君に社長のスキャンダルを撮れ、
とでも言ったのか、あのバカ女は?」
「そこまでわかってるのに、
私になんで撮らせたのかしら」
俺は「おしおきの時間だ」と言った。
彼女はソファに座ったまま、
がくん、とうなだれた。
ハイエナこと小池奈津美は用心深い女だ。
出された珈琲にも手をつけていない。
おそらく、一時間以内に戻らなければ、
警察に通報するように、
誰かに金で頼んであるにちがいない。
「残念、十五分でおしおきは終わる」
眠っている奈津美の耳元で囁いた。
会話を録音している可能性は高い。
脅迫する奴は、保身のために、
いろいろなことをしているものだ。
手をふれずに、
服も脱がすこともなく、
幻覚で凌辱できる俺にとっては、
それなりに美人の小池奈津美は、
退屈しのぎの獲物にすぎない。
俺は灰皿に吸殻を押しつけて火を消した。
小型カメラで録画していたとしても、
応接室でテーブルをはさんで、
向かいの席に座っているだけの俺が、
彼女に、何をしているか、
映像からではわからないはずだ。