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プレイボール!
官能リレー小説 - 学園物

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プレイボール! 12

エース中田が第一球目を投げた。
内角へのカーブ外れてしまいボールになる。二球目は外角低めのカーブ狙い玉ではなかったのか見逃した。これがストライクになった。
三球目は内角低めのストレート、これを待っていたのかおもいっきり強芯してきた。『キーン!!』と金属音がしてレフト線へ高々と上がった。球速が遅かったのかどんどんきれていく。球場にいる全員が打球を見ている。(由美は目を塞いでいたが…)
「ファール!」
危なかった。これで追い込んだとはいえ、球威が落ちてるだけに心配だ。
中田は汗を拭う。余裕もなさそうだ。
四球目はストレートが大きく浮き上がり、ボールになった。
五球目は相手に萎縮したのか完全なボール球だった。これでフルカウント次がボールでも負けになる。
味方ベンチは全員が目を塞いでいた、それが嫌だったのか監督がベンチで叫んだ。
「お前ら、先輩達が精一杯頑張ってるんだから、ベンチの俺たちが戦わなくてどうするんだ。」その言葉でベンチにいた全員がグランドを見た。
そして六球目、真ん中から外へ落ちるカーブ。
瀬川は球速の遅いカーブを狙って、タイミングをずらし、コンパクトにミートしてきた。
打球は低い弾道で一二塁間へ。
下がって守っていたこともあり、瀬川の打球に何とか追い付いた。
後はファーストに投げるだけだ。
「うっ!」
しかし、投げる時に痛みから足の踏ん張りが効かない。
俺の手から離れたボールは山なりになる。一塁手が捕ろうと懸命にジャンプするが、ボールはその頭上を越えていった。
その瞬間、歓声が聞こえた。
ああ…終わった。
僕はしゃがみこみ、うなだれた。
グランドで泣き崩れる味方たち、勝利で歓喜する相手チーム。
俺は人目を気にせずに泣き続けた。
だがその時滅多に口を開かない監督が大声を上げた。
「おまえら、泣いてないでさっさと整列しろ!!決勝戦という舞台を立派に戦いぬいたんだ!『礼』までしっかりしろ!」

…監督の言うとおりだ。
俺は溢れる涙を拭い、チームメートに声をかけ整列させた。明暗別れた両チームが向かい合う。

「礼!」
『ありがとうございました!!』
こうして俺の中学最後の大会は幕を閉じた…。


その日のロッカールームはまるで通夜のように暗い空気が漂っていた。
聞こえるのは、皆の嗚咽…ただそれだけで…。

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