うちのマネージャー 98
「……うっ……うそだろ……?」
段々と強くなる音の出所は、閉ざされている実験室の扉の外からで、その音に比例するように聡介の声は弱く、頼りない物へと変わっていく。
微動だにせず一点を見つめる聡介同様、共恵も息を詰め、その瞬間を待った。
ドガンッ!!!
そしてついに、一際大きな轟音が響くのと同時に、実験室の扉が開け放たれた。
「…来て…くれた……」
共恵の瞳から一筋涙が伝い落ちていった。
†††
「共恵、待たせてごめんな」
「う、ううん、来てくれると信じてた。健哉君」
「聡介、俺はおまえが、そんな汚い真似をする奴だとは思わなかったよ。」
「だ、だまれ、健哉!」
「俺は、今腹んなか、煮え繰り返ってんだよ。人の彼女にふざけた真似してくれたな」
笑顔で近付いてくる健哉だが、目は氷のように冷たく一切笑ってはいない。
「貸せよ、携帯。綺麗に撮れたんだろ?」
聡介の胸倉を掴み携帯を取り上げると、液晶に目もくれずに真っ二つに破壊した。
「あぁっ小原のオマ○コがぁぁぁぁあ…」
愕然として叫ぶ聡介を一瞥し、健哉は破壊した携帯電話を忌々しげに床に叩きつけた。
「…聡介」
「………ああああ……」
無残な姿になった携帯を見てその場にへたり込む聡介。その胸ぐらを再び掴み、ぐいっと顔を近づけ健哉は激しい憤りのこもった声を出した。
「…次…また共恵に手ぇ出してみろ」
「………」
「……………何するかわかんねぇからな?」
「ひっ……」
にやっと壮絶な笑顔を浮かべた健哉への恐怖に聡介は小さく悲鳴をあげた。そのまま健哉の手から逃れようとする聡介の鳩尾を、健哉は渾身の力で殴りつけた。