うちのマネージャー 91
「ほんと? ありがとね! ちょっと急ぐ用事だったから、探してたんだ。
助かったよ」
礼を言いながら、実験準備室に走る。
(共恵!待ってろよ!)
その後ろ姿が完全に見えなくなったのを確認してから、彼女はゆっくりと後ろを振り返った。
「……これでいいんだよねぇ?」
彼女の不安げな、けれど相変わらず愛らしい声音を伴った問いかけに応えるように、カツンと靴音が、そして艶のある声が響いた。
「……ええ、ありがとう」
先ほどまで健哉と話していた女生徒と同じ制服姿のはずなのに、とても同じ高校生には見えないほど大人びた少女がそこに佇んでいた。
「今度きちんとお礼をするわ」
「わぁっほんとー?ありがとー!」
にこにことしながら帰って行く彼女にひらひらと手を振りながら、こっそりと呟いた。
「ほんと…助かったわ……実験室棟は実験室棟でも、…フフフ…旧棟なのよね…ご愁傷様……“健哉クン”?」
†††
ピチャ……クチュ……クチャ
「…っん!……んぅっ…ん!んんーっっ…」
(ああっ……やだっ…やだぁっ)
心の中で叫ぶも、どうにもならなかった。
「…なぁ…どう?…なあ、小原?」
興奮した様子で問いかけてくる聡介に、共恵は思いっきりいやいやと首を振り、拘束が解けないかと体を精一杯ねじった。
「やめろよ小原…お前の力じゃ無理だって…諦めろよ…な?」
もう何十回と試しているため、共恵だって自分一人ではどうにも出来ないだろうことは分かっていた。けれど。
「……それよりもさ、きっ…気持ち……いいんだろ?…す、すげえなぁ……女って感じると…こうなるんだな……」