うちのマネージャー 42
「なっ…なっ…なにがー」
「何がおかしいかって?全部だよ全部。」
狼狽える聡介とは対照的に、健哉はようやっと笑いをおさめると、余裕の表情でそう言ってのけた。
「なっ!?」
「なぁ…聡介」
言いながらじわじわと近づいてきた健哉は、密着する二人の目と鼻の先まで来ると。
「俺、オマエには一生勝てねぇかもって思ってたけど、こーいうコトはてんでダメなのな?オマエ。」
そう言ったかと思うと、あっという間に聡介に拘束されていた共恵を、自分の腕の中におさめていた。
健哉の厚くて堅い胸板に顔を押しつけられる。けれども聡介とは違い、優しく、包み込むような抱擁に、共恵はうっとりとその身を任せ、自分からも離さないでと言わんばかりに縋りつくのだった。
(健哉くんっ)
思う存分すり寄り、健哉の香りを堪能する。
そんな共恵のあまりの変わりように愕然とする聡介を、さも面白そうに見やりながら、健哉は甘えてくる共恵の髪に指を通しつつ、口を開いた。
「…聡介、見せてやるよ」
言って、共恵の躯を反転させ、背後からその腰に手を回した。
「?」
何をするの?と言わんばかりに見上げてくる、共恵の無垢な視線を受け止めながら、健哉はその耳元に囁いた。
「共恵…」
囁きと共に右の耳に健哉の熱い息がかかる。躯が震え、全身の力が抜けてしまう共恵だったが、それを予測していたのか、健哉にがっしりと腰を抱き留められた。
ぴちゅっ…
「ああっ…」
そして濡れた音と、耳の奥深くまで入り込んできた健哉の舌。責められているのは耳だけのはずなのに、まるで全身を愛撫されているかのように感じ入ってしまい、共恵は無意識に躯を捩っていた。
(あっ…やだ…気持ちィ…)
目の前で目を見開き、食い入るように共恵に視線を注ぐ聡介。そのことを十分に認識しながら、共恵はただひたすら健哉からの愛撫に身を任せ、存分に喘いだ。
「ぁんっ…ぁっ…あっ…んっふ」
それはまるで、自分に触れていいのは健哉だけであると誇示しているかのようだった。