うちのマネージャー 40
共恵の思考は突然に遮られた。
「小原っっ!」
「……っえ」
昼の光が射し込む部室のドアの前。総介が佇んでいた。
「…あっ…ごめんね」
彼の出現に、漸く共恵は自分の仕事を思い出した。仕事のこと、先程までの激しい情事、自分の考えていたこと。後ろめたい様々な要因からか、自然と総介に背を向け、話を続けた。
「すぐに持って行くから、戻っていいよ?」
「…小原…」
だから共恵は、総介が間近に迫っていることに気づけなかった。
―ガバッ!
「っきゃっ!?…っえ!なに!?」
突然の聡介の行動に、共恵は声を上げ身じろぎした。いや、実際はあまりに強く、まるで羽交い締めにするかのように抱きついてきた聡介のせいで、それさえも敵わなかったのだが。
「やっ!いやっ!離してっ!!」
一気に共恵の目に涙がせり上がった。それと同時に一昨日の健哉との一件を思い出す。
あの時も後ろから、突然だった。でもあの時は怖いだけだった。健哉の真意がわからず、何をされるかわからず、ただ恐怖にとらわれていた。―…でも今は。
「…ひっ!」
後ろから、首筋に顔を埋められて、鳥肌が立つ。
そう、今共恵の心にあるのは、“嫌悪感”だった。共恵の全身が聡介を拒絶しているのだ。
しかし、もちろん聡介にはそんな共恵の気持ちなどわかるはずもなかった。むしろ妄想の世界が現実となった喜びに打ち震えていたのだ。
と、そこへタオルを取りにきた健哉が戻ってきた。