うちのマネージャー 39
何をしているかなんてもうわかっている。だって自分はこの声を知っているから。昨日自分は、始終こんな声を出していたはずだ。
(シてる…の?)
よくよく耳をすませば微かに水音がしている。ぐちゅ、ぐちゅと。
「…っく…締め付けんな…」
「あんっ!…中で…中で出してぇっ!!」
「ああっ…たっぷり注いでやるよっ!!」
「あっ…あぁっ…ひぃぃいんっ!」
声をはばかるのも忘れ、絶頂の声をあげたのか、途端に静かになった。一方の共恵は二人の会話が気になり、耳をすませてしまっていた。
「…っはあ…おまえ中出し好きだなー」
「だってぇ気持ちぃんだもん♪…自分だってイイくせにぃ」
「まぁ男だし。嫌いな野郎なんていないだろ」
「んふ♪だよねー」
二人はしばらく事後の余韻に浸っていたようだが、身支度を終えると、うまく隠れていた共恵には気づかず、部室を後にした。どうやら差し入れをしてくれたOBと、その彼女だったようだ。
二人が完全に見えないところまで去ってくれ、漸く共恵は一息ついた。部室に一歩足を踏み入れると情事特有のにおいが鼻についた。時間にしたら居合わせたのはほんの数分のはずなのに、まるで何時間も隠れていたかのようだ。急いで窓を開け、空気を入れ換える。
“中で出して”
“男だし。嫌いな野郎なんていないだろ”
耳にこびりついて、離れない。共恵自身、その言葉の意味はなんとなくわかる。…なんとなくだけど。昨日の健哉はどうだったのだろう。
(中出しシたいって思ったのかな…)
シてくれて、いいのに―